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「いっそ辞めたほうが」10年前、福永祐一は本気で引退を考えていた…エピファネイアを操った“会心の手綱”の真相〈JRAラスト騎乗〉
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byJIJI PRESS
posted2023/02/19 06:00
福永祐一が「一生忘れられない」と振り返る2013年の菊花賞。シーザリオを母に持つエピファネイアは、2着に5馬身差をつけてゴール板を駆け抜けた
「デットーリが来ると知って、ガッツポーズした」
'11年、'13年に獲得したリーディングジョッキーは、早々に出た「小野メソッド」の成果だが、もし菊花賞でエピファネイアを上手に操れなかったとしたら、そこでムチを置く選択をしていたかもしれなかったと言うから驚く。「ワールドクラスのパワーがある馬を、苦労の末に乗りこなせたのは大きな自信になりました。さあ、これからはどんなパワーホースでもどんと来いと胸を叩いたのですが、あんな馬にはあれから1頭もお目にかかることができていません」と福永。そういう意味でも、忘れられない'13年の菊花賞なのだろう。
ルメールや川田将雅らの台頭で、福永の騎乗馬の質はあの頃よりも下がってきているのが実情だが、「今年の春のGIは、自分がやりたいレースができました。準備が上手にできるようになっていますから、あの最高の充実感がまた味わえる予感があります」と前向きだ。
「あのデットーリが藤原(英昭)厩舎にやって来るというニュースを知って、僕はその瞬間、ガッツポーズをしました。一緒に仕事ができるなんて夢のようです。名騎手たちの動作解析もしっかりさせてもらいます」と、この秋の外国人騎手の大攻勢にも、むしろ表情が輝く42歳なのだ。