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「“愛情”が伝わってくる選手はワタナベが初めて」渡邊雄太がNBAネッツで勝ち取った“信頼”…2023年に描く夢物語の舞台とは?
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2023/01/06 11:00
渡邊が「今季のベストゲーム」と振り返った現地時間2022年12月16日の古巣・ラプターズ戦
一方、渡邊の方にとってもブルックリンは最善の環境だったようだ。これまでNBAではなかなか確固たる役割を手にできなかったサウスポーは、多くのタレントを擁してはいても、“守備力”“エナジー”“ケミストリー”という3点が不足していたスター軍団に最高のハマり具合をみせる。自身の成長もあって、ネッツで不可欠の選手になることで、このスポーツに関わる原点を思い出せたのだという。
「もともと僕はずっとバスケが好きだというのが一番の原動力です。2022年序盤、プレーイングタイムがほとんどもらえなくなっていた時期は、正直、楽しくないって思ってしまっていました。バスケ選手なので、どうしてもゲームに出たいという思いが強かった。だからこそ、楽しむために、プレーするのはNBAではなくてもいいんじゃないかなと思ったのがこのオフでした。それが夏の日本代表と、こうしてネッツに来てからを通じて、これだけ試合に出れるようになって、改めて自分は本当にバスケットが好きなんだというのを再確認できたのはよかったと思います」
絶好調のネッツ、優勝候補の一角に
時を同じくして、ネッツも絶好調期間に突入する。デュラント、アービング、シモンズといった主役に加え、23歳のニック・クラクストンが成長し、ロイス・オニール、渡邊のようなサポーティングキャストとの間に待望のケミストリーが誕生。12月7日以降、圧倒的な強さで12連勝を続け、優勝候補の一角と目されるようになった。
そんな強豪チームで、最近の渡邊はいわゆる“クロージング・ミニッツ(ゲーム終盤の勝負所)”のプレーを任されるほどの信頼を得ている。3Pの精度も落ちておらず、2月のオールスターの週末に開催される3Pコンテストの出場候補選手という声も出るようになった。渡邊自身も「休養も必要ですが、(3Pコンテストに)もし招待されたらすごく名誉なこと。断ることは僕の性格上ないと思います」と述べている。
充実のシーズンはまだ始まったばかり。これから先、渡邊にはさらに素晴らしい幾つものハイライトが待ち受けているのかもしれない。
「僕はNBAに入った時からずっと優勝というのを目標に掲げてきました。本当に今季はすごいチャンスがあると思っています。個人的な目標みたいなものは特にないですが、このまま重要なピースとして、チームを引っ張っていく1人になれたらという気持ちはもちろんあります。優勝という大目標のために、何をしなければいけないかというのを常に考えながらやっていきたいです」
こんな想像を巡らせてみてほしい。2023年6月、NBAファイナルの舞台に渡邊が立ち、日本人選手としてはもちろん前人未踏のステージで優勝に向かって邁進するネッツの一員として重要な時間でプレーするようなことになれば……そんな震えるような可能性は、もはや単なる夢物語ではなくなっているのだろう。