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「“愛情”が伝わってくる選手はワタナベが初めて」渡邊雄太がNBAネッツで勝ち取った“信頼”…2023年に描く夢物語の舞台とは?
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2023/01/06 11:00
渡邊が「今季のベストゲーム」と振り返った現地時間2022年12月16日の古巣・ラプターズ戦
無保証のキャンプ契約で2022-23シーズンをスタートさせた渡邊だったが、トレーニングキャンプ、オープン戦、そしてシーズン序盤戦に評価は急上昇。ハッスルプレー、的確なディフェンス、精度の高い3ポイントシュート(3P)で瞬く間にチームに欠かせない戦力になった。
11月17日のポートランド・ブレイザーズ戦では5本の3Pを成功し、同20日のメンフィス・グリズリーズ戦では第4クォーターに4連続で決めるなど、いくつものハイライトを生み出した。中でも12月16日のラプターズ 戦ではフィールドゴール(FG)を6/7という高確率で決め、最終クォーター残り15秒で一時は逆転となる3Pも沈めて勝利に貢献。「思い出のある場所でのゲームで、自分が活躍して勝てた。あの試合が今季のベストゲーム」というほどの働きで古巣相手に溜飲を下げる結果になった。
3Pが絶好調で、成功率「52.1%」は現地1月3日のゲーム終了時点でNBA全体で1位になった。そうやって継続的な活躍を続ける過程で、同じネッツでプレーするケビン・デュラント、カイリー・アービング、ベン・シモンズといったスーパースターたちからも信頼を勝ち取った。その上昇の過程はドラマチックかつスリリングで、予想外で、感動的ですらあった。
ブルックリンの人々を魅了した渡邊の“笑顔”
こうして快進撃を展開する過程で、渡邊はブルックリンの人気選手になっていく。最近は背番号18が登場するたび、本拠地バークレイズセンターに大歓声が沸き起こるようになった。チームの公式SNSへの露出頻度が抜群に高いのもスポーツファンならもうご存知の通りだろう。これほど人気沸騰した理由を、YESネットワークのネッツ戦実況担当、イアン・イーグル氏はこう説明する。
「私はもう30年この仕事をやってるが、渡邊ほどこのスポーツをプレーする喜びとバスケットボールというゲームへの愛情が伝わってくる選手は初めてかもしれない。そのエネルギーは伝染性で、見ている私たちにも伝わってくるんだ」
このイーグル氏も渡邊に魅せられた1人で、最近ではゲーム中に渡邊の名前を絶叫するシーンを集めたコンテンツがネッツの公式サイトで人気を博したばかりだった。
ハッスルプレーは渡邊のトレードマークだが、それと同時に最近では本当に楽しそうにプレーしている印象がある。ベンチにいても、コートに立っていても常に笑顔。その姿からはもともと“ゲーム”であるバスケットボールの楽しさと、NBAという大舞台でしのぎを削れることの幸福感が間違いなく見えてくる。その喜びを間近で感じ取ったブルックリナイトも、親しみと愛着を感じずにはいられなかったのだろう。