箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
原晋監督「ツーピース足りなかった」まさかのブレーキ、快走も…青学大、“7人の4年生”の誤算と絆 「スーパースターじゃない世代」の4年間
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki/Yuki Suenaga
posted2023/01/04 11:03
青学大6区の西川魁星と、2区の近藤幸太郎
岸本の活躍の波及効果は大きく、近藤や前回金栗四三杯(大会MVP)の中村唯翔、10区の区間記録保持者である中倉啓敦、さらに名スターターである目方将大らは力をつけ、強豪の青山学院大で出番を勝ち取った。岸本とは同郷で中学時代からライバルだった横田俊吾も、なかなか箱根の出番はなくても腐らずに努力を重ねた。
長きにわたるケガに苦しんだ時期があったものの、原監督は岸本に対して絶大な信頼を寄せていた。
今回の箱根駅伝でも、当初のプランでは、1区に近藤、2区に岸本と、序盤に二枚看板を並べてスタートダッシュを図るつもりだった。
結局、中村が直前にスネを痛めたことで幻のオーダーとなったが、原監督は最後の箱根でも岸本に2区を託すつもりだったのだ。タラレバを挙げてもキリがないが、いち駅伝ファンとしては、このオーダーの駅伝を見てみたかった。
原監督「この経験は財産になる」
主力だった4年生が大量に卒業する今回の箱根駅伝は、青山学院大にとってターニングポイントになりそうだが、原監督は前を向く。
「自ら律する自律スタイルをもって、自ら考え行動するという青学スタイルはこれからも強固なものにしていきたい。その中で、今回は4年生だけがプレッシャーを感じたわけではなかった。チームとしてプレッシャーを感じていましたから、この経験は財産になるし、組織の土台を作ることはできたと思う」
箱根の優勝は逃したかもしれないが、現4年生が築き上げたものをベースにして、さらに強力なチームを築いていく覚悟だ。
青山学院大は2015年の第91回大会の初優勝以降、箱根の連勝が途切れても、実は連敗はしていない。敗れた翌年には必ず優勝しているのだ。
「皆さんは、良い10年間だけを見てくれているだけですから」と原監督は謙遜するが、敗戦を糧にして、必ずさらに強力なチームとなって箱根路に帰ってくるのが青山学院大というチームだ。メンバーはがらりと入れ替わるかもしれないが、第100回大会に挑む青山学院大は、きっと侮れないチームになっているはずだ。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。