箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「最後だから楽しめ」駒大・大八木弘明監督が9区の4年生キャプテンにかけた電話 山野力が明かす“退任を告げられた夏”「監督が泣くなんて…」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2023/01/04 17:01
大手町でゴールを待つ駒澤大学・大八木弘明監督(右)と9区から駆けつけた山野力(中央)。9区を走る前、大八木監督からは電話がかかっていた
監督は、辞める理由、3冠への想いなど涙を流しながら3人にそう伝えた。
「監督が泣くなんて、それまで見たことがなかったです。自分はもらい泣きしやすいタイプなんですけど、その時は必死に耐えて、何も言えずにただ監督の言葉を聞いているだけでした。やめるという話からは今年の駅伝や3冠に賭ける強い思いが伝わってきました。そこからですね、監督のためにも箱根に勝ちたい、3冠を達成したいという気持ちが強くなったのは。ここまで駒澤大を強くしてくれた監督に有終の美を飾ってほしい。そう思って、僕ら3人は、その目標を達成するため本気になってチームを引っ張っていこうと決めたんです」
山野ら4年生は下級生たちには監督退任を知らせなかった
山野ら3人は、下級生たちには監督退任を知らせず、今まで通り背中や結果で彼らを引っ張った。この時、重視したのが、コミュニケーションだった。山野が2年、3年時には、必ずしもそれが十分ではなく、それが一体感を高めていく上で影響を与えていると感じていた。
「やっぱり下級生が上級生に話しかけるのって難しいんですよ。でも、そういうのができる空気を作っていかないとチームが本当の意味で一つになることは難しい。だから、上級生から積極的に話しかけるようにして、それを田澤にもお願いしてやってもらうようにしました」
上級生が下級生に積極的に話しかけたり、ちょっとイジったりすることでチーム内の雰囲気が明るくなった。練習でも上級生が声かけをしていくと、タレずに練習をしっかり終わらせることができる選手が増えた。そうして全体の選手の力が向上し、分厚い選手層を実現した。
やめるということを言わずに目標を共有する難しさ
仕上げは、戦える自信を持つために結果が必要だった。