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“ちょっと早すぎる”2023年ドラ1候補ベスト3《社会人編》…プロ野球スカウトの証言「彼は明治大のときも上位指名ならプロ入りでしたから」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2022/12/30 11:01
2023年ドラ1候補・社会人編【1】三菱重工West・竹田祐投手(23歳)
“ヤクルト1位指名”に続けるか?
■社会人編【3】東芝・藤村哲之投手(23歳)
この秋、マウンドでの立ち姿が変わった。何かをつかんだ投手は、打席に入ってくる打者をマウンドから見下ろせるようになる。打者の様子をジッと見つめて、文字通り、打席に迎え入れている。
マウンド上の支配感。投手としてのステイタスが、1つ上がったように見える。
日本選手権、鷺宮製作所を8回途中まで4安打無失点に抑えた【3】東芝・藤村哲之投手(23歳・180cm86kg・左投左打・横浜商科大)のピッチングには驚いた。
べつに初めて驚いたわけじゃない。
夏の都市対抗、初戦・北海道ガス戦で0対1の緊迫した後半7回にリリーフ登板。もう1点もやれない状況で、3イニングを6奪三振のパーフェクトリリーフをやってのけたその試合だって、立派になったもんだなぁ……と嬉しかったものだ。
試合途中まで好投しながら、後半に崩れてなかなか勝てなかった大学時代を知っているからだ。
素質を見込んで手元に置いただけに、横浜商科大・佐々木正雄監督(当時)の期待は大きく、応えようとする藤村投手は、ここ一番の場面で気迫が空転することも少なくなかった。
「自分の力が足りないからです……」
それしか言わずに、泣いていた。
社会人球界の大舞台で快投を繰り返せるようになった今でも、「150キロ」みたいな凄いボールはない。その代わり、滑ってくるような独特のクロスファイアーに、学生当時から切れ味鋭かったスライダーにチェンジアップ。
「これでどうだ!」と自信を持って投げ込める熱い心意気が、そのピッチングに満ちる。
気迫で打者を圧倒できるようになったのは、積み重ねてきた苦しい記憶があったからだろう。こうなったら、人間は強い。
3日後のトヨタ自動車戦では、劣勢の9回のリリーフで、今度は3安打を浴びて2失点。ちゃんと「宿題」も持って帰った。
東芝は、3年目のエース・吉村貢司郎投手がプロに進む(ヤクルト1位指名)。そのあとを継いで、来季は東芝投手陣の屋台骨を支えながら、藤村哲之自身もプロを目指して、正念場の「3年目」を迎える。
◆◆◆
今回、このコラムに挙げた3人の快腕たちは、社会人投手としては、まだ「かけ出し」の若者たちに違いない。
この先、プロ球界から確かな信頼を得るために彼らに必要なのは、1年間ムラのない実績を残せるための「コンスタントな実戦力」であろう。
唯一無二ぐらいの存在になっている来春、盛夏を、心から楽しみにしている。
<大学生編から続く>