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“障害界の絶対王者”オジュウチョウサンが相棒・石神深一とラストランへ…「乗っていて感動しました」武豊も唸らせた最強ハードラーの足跡
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byPhotostud
posted2022/12/23 17:00
2021年の中山大障害を制したオジュウチョウサンと主戦の石神深一。数々の記録を打ち立てた不世出の障害王が、ついにラストランを迎える
そして11歳になった今年。初戦の阪神スプリングジャンプでは3着に敗れたが、つづく中山グランドジャンプを制し、またも「王者」としての輝きを取り戻した。
秋初戦、前走の東京ハイジャンプで9着に敗れたことで、株式会社チョウサンの長山尚義オーナーがオジュウの引退を決断。中山大障害をラストランとし、種牡馬となることになった。
「とにかく無事に…」いざラストランへ
この馬齢まで高いパフォーマンスを発揮できているのは、和田調教師をはじめ、担当の長沼昭利厩務員、そして石神らによる丹念なケアの賜物だろう。
もうひとつ大きいのは、父ステイゴールドの血の力か。近年、ひとつのレースで出走馬にかかる負荷が大きくなり、オープン馬は、外厩での調整を経て、十分な間隔を取って走るスタイルが主流になっている。そうした過大なストレスを受けつづけるうち、特に牡馬は競馬に嫌気が差してしまい、フィジカル面ではどこも悪くないのに走らなくなるケースがまま見られる。それが、ずっとイライラし、カッカしがちな牝馬だと、ストレスから逃れて楽をしようとする方向ではなく、ムキになって発散しようとする。最近、牝馬が強いと言われている背景には、そうしたことも影響しているのではないか。
現役時代から肉食獣のようなところのあったステイゴールドは、能力と一緒に激しい気性を産駒に伝えており、それが現在のストレスの大きな競馬における高い適性につながっているのかもしれない。
そんなステイゴールドの代表産駒であり、特別な景色を見せつづけてきたオジュウチョウサンなら、自身の記録を伸ばすJ・GI10勝目を挙げ、障害馬として初の獲得賞金10億円突破(平地の賞金も合算)を達成するかもしれない。が、それ以前に、とにかく、無事にゴールを駆け抜けてほしいと思う。
競馬史を大きく書き換えた名馬・オジュウチョウサン。その最後の勇姿を、この目にしっかり焼き付けたい。
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