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キタサン満票を阻止した障害の名馬。
オジュウチョウサンの絶対王者ぶり。

posted2018/01/30 17:00

 
キタサン満票を阻止した障害の名馬。オジュウチョウサンの絶対王者ぶり。<Number Web> photograph by AFLO

障害馬でこれほどの知名度、人気を持つオジュウチョウサンは極めて突出した存在だ。

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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 眩いライトに照らされた壇上で、2年連続年度代表馬となったキタサンブラックの北島三郎オーナーが、「感謝と感動で一杯です」と思いを語った。主戦をつとめた武豊が隣で笑みを浮かべ、耳を傾けている――。

 1月29日、2017年度のJRA賞授賞式が都内のホテルで行われた。年度代表馬のオーナーも、主戦騎手も、そして馬自身も国民的スターだったからこその華やかさがあった。

 しかし、そのキタサンブラックとて、満票で年度代表馬に選出されたわけではない。

 290名による記者投票の結果、キタサンが得たのは287票。あとの3票は別の馬のもとに行った。

 その3票を得たのは、オジュウチョウサン(牡7歳、父ステイゴールド、美浦・和田正一郎厩舎)だった。2016年の中山グランドジャンプ(J.GI)から昨年の中山大障害(J.GI)まで無敵の8連勝を遂げた、障害界の「絶対王者」である。

 '16、'17年と2年連続最優秀障害馬となったオジュウチョウサンとはどんな馬なのか。その強さの背景を見ていきたい。

平地では未勝利、障害転向後も実は苦戦。

 オジュウチョウサンは、2011年4月3日、北海道平取町の坂東牧場で生まれた。

 美浦・小笠倫弘厩舎の所属馬として'13年10月、東京芝1800mの新馬戦でデビューし11着。次走、11月の未勝利戦でも8着に敗れ、平地では未勝利に終わる。1年の休養を経て障害に転向し、'14年11月、福島で障害初戦に臨むもしんがりの14着に敗れた。

 その後、美浦・和田正一郎厩舎に転厩し、山本康志を鞍上に迎えてからジャンパーとしての素質を見せはじめる。

 '15年1月の障害2戦目で2着、3戦目で3着となり、4戦目の未勝利戦と5戦目のオープンを連勝。7戦目、障害重賞初出走となった6月の東京ジャンプステークス(J.G3、4着)から、現在の主戦である石神深一が騎乗するようになる。

 コンビ2戦目のオープンを勝ち、つづくイルミネーションジャンプステークスは4着。そして、J.GI初参戦となった中山大障害で6着となる。J.GIに出るところまで出世はしたものの、勝ったアップトゥデイトに4秒以上離された結果が示していたように、このころは「そこそこ強い、障害オープン馬の一頭」という存在に過ぎなかった。

【次ページ】 石神騎手が気づいた「全力ではないのでは」。

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