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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
「め、メッシがイタリア人認定?」アルゼンチンW杯優勝に“なぜかイタリアが超ウキウキ”なワケ「マラドーナ神が乗り移った!」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byMutsu Kawamori
posted2022/12/22 11:03
ついにW杯トロフィーを掲げたメッシとアルゼンチン。しかしなぜ、イタリアが大ハシャギしてるのか
大会に自国代表を送り込めなかったイタリアでは、開幕直前に伊紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』がアンケートを実施。応援したい国を尋ねたところ、得票率35%でぶっちぎりの1位がアルゼンチンだった。
(※ちなみに「最も不運を願う国」1位はフランス。断トツの48%を記録した)
EURO2020王者イタリアとコパ・アメリカ2021王者のアルゼンチンは、今年6月に「フィナリッシマ」と銘打った決戦で激突。チーム再構築段階のアッズーリは0-3と惨敗したにも関わらず、恨むどころかカタール大会を通してアルゼンチンへ親愛の情を見せた。双方の同胞意識はそれほど強いといえる。
国内三大スポーツ紙全部が満点採点の快挙!
12月18日の決勝戦翌日のイタリア各紙は、祝賀ムード一色。
『ガゼッタ』紙は、メッシ戴冠に故マラドーナの代名詞「神の手」をもじって「IL PIEDE DI DIO(神の足)」と1面に大見出しを打った。
試合の評点ではMVPメッシに数年に1度レベルのレア度を誇る最高評点「10」が贈られ、寸評も「無限大プレイヤー。未来はエムバペのものでも"今"を勝ったのはメッシ。自らの2ゴールでW杯を勝ち取り、キャリアを完全無欠のものとしてマラドーナとの比較論争に終止符を打った。現代サッカーの究極」と褒めちぎった。
加えて『コリエレ・デッロ・スポルト』、『トゥット・スポルト』両紙まで最高評点10点を与え、“伊3大スポーツ紙オール満点評価”という前代未聞の事態が発生した。未来永劫、再現不可能な快挙だろう。
ナポリはあくまで“天から見守ってくれたマラドーナ”
大会を通し、イタリアでの報道で目立ったのが、「メッシ・マラドニアーノ(マラドーナ化したメッシ)」という表現だ。
確かにメッシは、かつてないほど熱いリーダーシップや感情の発露を見せた。ナポリっ子たちが“ディエゴ神が憑依した!”と考えても無理はない。
ファイナル当日のナポリでは、巨大壁画で有名なマラドーナ広場が数千人の人混みにと、水色と白のフラッグであふれ返った。市当局はパブリック・ビューイングを禁止したが、多くの仲間との共有体験を望む有志たちはディスコなどを借り切り、ゲリラ観戦会が強行された。
興味深いのは、ナポリで優勝を祝う歌声の対象はメッシではなく、あくまで“ディエゴ”だった点だ。
アルゼンチンの優勝をもたらしたのは“天から見守ってくれたマラドーナ”。水色のユニフォームを着て地元に栄光のスクデットを獲ってくれたのは我らがディエゴで、メッシではない。ナポリのマラドーナ信仰の何と根深いことか。