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「あれ、松下さん?」バイト先に後輩のオズワルド伊藤俊介が来店…元相方のコンビがM-1決勝に進出した“2回戦落ち芸人”の後悔
text by
松下慎平Shimpei Matsushita
photograph byAFLO
posted2022/12/18 11:00
2021年のM-1グランプリで2位となったオズワルドのツッコミ・伊藤俊介。2022年は敗者復活戦からの逆転優勝を狙う
そして運命の11月30日、決勝進出の9組が発表された。すでにご存知の方も多いとは思うが、そこにオズワルドの名前はなく、ダイヤモンドが初選出されていた。結果が世に公表されて数時間後、A氏からLINEで連絡があった。
「まさかオズワルドが落ちて、ダイヤモンドがいくとは……」
続けて「まぁ、触れないわけにはいかないでしょう。その辺もうまいこと書いてみてください」。おいおい、競馬の記事ばっかり読みすぎて、君は人への気遣いの心をなくしたのかい? そのクレイジーさに、不覚にも私はまた笑ってしまった。
まぁ、これも仕事だ。すでに8割方仕上がっていた原稿を、私はパソコンからそっと消去した。
「言ったもん勝ち」の競馬芸人の端くれとして
のっけから個人的な話ばかりで趣旨が逸れてしまったが、元々の依頼は「元騎手見習いの芸人という立場から、M-1グランプリの競技性やドラマについて、競馬のそれと重ね合わせるような話として書いてくれ」というものである。A氏の要望通り、できるかぎり自虐を交えて、どの方面にも角が立たないようにゴールを目指したい。
予防線を張らせてもらうと、“競馬芸人”という人種はたくさん存在する。競馬番組でレギュラーを持つレベルの誰もが知る売れっ子芸人もそうだが、世にはあまり知られていないが競馬が好きでブログやYouTube等で情報を発信している芸人も、広い意味での競馬芸人と言えるだろう。定義がない以上、「言ったもん勝ち」の世界なのだ。
そもそも、お笑い芸人の数が多過ぎるのも事実として受け止めなければならない。今年のM-1のエントリー数はついに7000組を超えた。出場資格のないコンビやトリオ、コント師の一部がエントリーしていないことを考えると、芸人を名乗る者たちの総数は……。そのなかの1人である身からすれば、考えたくもない。そんな無法地帯なのだから、M-1と競馬を絡めた話なんてものは、きっと自称競馬芸人の誰かがどこかですでに書いていることだろう。なので、この先の話も自称競馬芸人の一見解として広い心で読み進めてほしい。
<後編へ続く>