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「あれ、松下さん?」バイト先に後輩のオズワルド伊藤俊介が来店…元相方のコンビがM-1決勝に進出した“2回戦落ち芸人”の後悔
text by
松下慎平Shimpei Matsushita
photograph byAFLO
posted2022/12/18 11:00
2021年のM-1グランプリで2位となったオズワルドのツッコミ・伊藤俊介。2022年は敗者復活戦からの逆転優勝を狙う
私の所属するコンビ、テンポイントのM-1は今年も2回戦で終わりを迎えた。不甲斐ない話ではあるが、それが現実である。個人としても、2015年と2016年にそれぞれ別の相方で3回戦まで進んだのがキャリアハイ。これまた不甲斐ない話だ。結果を出してもいない人間が、競馬を絡めるとはいえ、偉そうにM-1について講釈を垂れたところで誰も好意的に受け止めてはくれないだろう。世間やお笑いファンから冷ややかな目を向けられたくない。書き方を間違えれば、競馬ファンからも反感を買うことになる。暗い未来しか見えてこない。そういった旨を編集のA氏に伝えた。するとA氏は、
「まぁ、自虐とか多めに入れておけば大丈夫じゃないですか」
と大した問題ではないといった口ぶりで言い放った。
いやいや、担当編集がナチュラルに傷口をえぐるような自虐を勧めるなんて、いささかクレイジーすぎやしないか。そう思ったが、同時に笑ってしまった。芸人が笑わせられてしまったら負けである。私はA氏の依頼を引き受けることにした。そもそも仕事を選り好みできるほど、2回戦落ち芸人の懐事情に余裕なんてないのだ。
今年のM-1に勝ち残っていた“元相方のコンビ”
その打ち合わせのなかでM-1に関しての思い出をいくつか聞かれ、そのうちのひとつが冒頭のオズワルド伊藤とのエピソードである。編集のA氏は「それいいですね! オズワルドは今年も決勝残るでしょうし、その話を冒頭に書き始めましょう」と言った。
私自身、オズワルドは決勝に残るだろうと考えていたのでその案を了承した上で、ひとつ気になることがあったので彼に尋ねた。
「あと、元相方同士が組んでいるコンビも準々決勝まで残っているんですが、そこが決勝まで残った場合ってどうします?」
そうなのだ。先述した私の2015年、2016年のM-1出場時の別々の相方が、後にダイヤモンドというコンビを結成し、今年の準々決勝に駒を進めていたのである。歯痒い思いが全くないと言えば嘘になるが、それぞれ袂を分かち6、7年にもなれば、良い意味でも悪い意味でも十分過去の話として受け入れられる。
個人的には、3年連続ファイナリストのオズワルドほどではないにしろ、ネタの質や現在の東京お笑い界での彼らの勢いも考慮すると決勝進出の可能性は十分あると考えていたので念のため確認した。A氏はスマートフォンでM-1のホームページをチェックする。
「まぁ、たぶん大丈夫でしょう。ひとまずオズワルド軸でいきましょう!」
彼の力強い言葉に、私は一抹の不安を抱きつつもその提案を了承した。