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プロ野球PRESSBACK NUMBER
元西武・辻発彦が明かす“一軍監督の苦悩”とは? あの中村剛也に命じた二軍行き、“走らない”森友哉への叱咤…「意地になっちゃう時もある」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2022/12/22 11:02
埼玉西武ライオンズの監督を今季限りで退任した辻発彦氏にインタビュー(後編)
しかし翌年以降、指揮官は毎年抜ける主力選手の穴に、腐心することになる。19年は菊池、浅村、炭谷(銀仁朗)が、20年は秋山が移籍したのだ。
「『穴を埋める』というのは現実的に難しいんです。特に浅村の打力をカバーするのはなかなか厳しい。そこを少しずつみんなが成績を上げてくれて、打線では山川が成長し、セカンドは外崎(修汰)が頑張ってくれた。19年はよく優勝できたと思います。
でもその年のオフに秋山が移籍してね。あれは大きかった。クリーンナップ前の上位打線が機能するかどうかは大事ですから。あそこから1番打者を固定できなかった点は悔いが残ります」
森友哉に「しっかり走りなさい!」
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正捕手として、チームの中心選手として成長を見守ってきた森友哉も印象的な教え子の一人だ。
「いい時はいいんですけど、ダメな時はね(笑)。打てないと悔しがるし、今年は骨折するバカみたいなこともしましたが、それだけ熱い思いがあるんです。成長は目に見えて明らかでした。若いピッチャーをリードして勝った時の喜び方や、逆に打たれたピッチャーとロッカーで話し込んでいるところを見るたび、キャッチャーらしくなってきたな、と。ただ1つね、あいつの悪いところは打ってダメだと一塁までテケテケテケって……走らないんですよ」
森は今オフ、オリックスにFA移籍。退任後に挨拶に訪れた愛弟子にかけた激励の言葉もやっぱり、「しっかり走りなさい!」だった。
「走ることは打つことに通じるし、技術のためだけではなく、ファンや子供たちに見られている存在なんだから、その姿勢を見せるのが彼の務め。『わかりました、走ります!』なんて威勢よく言ってましたけどね、そこはこれからもしっかりチェックしていきますよ」
CS敗退で号泣。「つくづく短期決戦は…」
決して非情になりきれるタイプではない。だからこそ勝利と育成のバランスという面ではジレンマもあった。
「黙っていても選手は育つと思うけど、どこかに必ずきっかけがあると思うんです。若い選手にチャンスを与えた時、結果が出ないともう代えようかなと思いながらも、次の打席で打ったら飛躍できるんじゃないか、って意地になっちゃう時もある。往生際が悪いんですよ、本当に」
在任中、4度進出したCSではいずれも敗退。覇者としてソフトバンクと対戦して敗れた18年のCSファイナルでは、試合後のセレモニーで号泣した。