「ありがたいけど、“客”に主導権を渡すことはしない」

　イザガクマエフ戦は、相当に痛い敗北だった。それでも、青木にとっては引退するとかしないとかの問題ではない。同時に、このままずっと同じように闘い続けるということでもない。

「弱い相手とやりたいとか、勝てそうな試合がしたいってことではないんですけど。少なくとも試合のペースは考えなきゃいけない。今までみたいに“来た球を打つ”ではなくなると思います。来た球を打ってきたからこそ信頼されてたとも思うんですけどね」

　何もかもさらけ出し、強敵に立ち向かうベテランの姿に感動したという格闘技ファンもいる。だが青木はこう言うのだ。

「それは秋山戦まで、ですね。負けても傷がつかない選手という評価はありがたい。何年か前まではなかったことですから。だからこそ、自分に甘えずやっていきたい。負けても評価されるんだったら、何やっても成功ってことになっちゃう。それだとキリがないでしょう。評価されるのはありがたいけど“客”に主導権を渡すことはしないです」

　かつては、50歳を過ぎて試合を続ける自分の姿が想像できた。しかし今は“現役”としてのあり方そのものを捉え直している。キャリア20年、青木真也ならではの晩年とはどういうものか。青木は言った。

「それを今、考えてます。だからモチベーション高いんですよ。エナジーが凄くある」

《後編につづく》

#2に続く

青木真也が語る「僕にしかできない終活」 39歳のベテランは、いかに格闘技を続けるのか？「主義主張を表に出すのは、命がけなんです」