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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
秋山戦に続いて復帰戦も完敗…“格闘技者”青木真也が敗戦後に明かしたこと「評価はありがたいけど、“客”に主導権は渡さない」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byONE Championship
posted2022/12/21 11:03
11月19日、ONEのザイード・イザガクマエフとの一戦
むき出しの心境すら晒す
その“来た球”が、凄まじい豪速球なのも分かっていたことだ。試合前夜、青木は音声配信アプリでむき出しの心境を吐露している。
「試合するのは怖いです。でもみんな怖いですよね、仕事するのは。カッコ悪いこと言うけどいいかな。手の平返されてきた人生なので(自分の周りから)人がいなくなるのが怖いんですよ。死に物狂いで闘ってくるので、できたら試合の結果に関係なく青木真也のもとにいてくれたらと思います。そう思うことで全力で試合ができます。本当に怖いんです、不安なんです、今」
試合前夜は「自分と向き合う時間」だと青木。向き合った自分は、いつも「試合したくない」と思い、怖くて仕方がない。そしてそんな自分すらも晒す。彼は他人に対しての舌鋒も鋭いが、同時に自分を取り繕うこともしない。
配信ではこんなことも言っていた。
「ただただ納得したい。納得して終わりたい」
ダウンにパウンドの連打…イザガクマエフ戦は“完敗”だった
試合は“完敗”と言ってよかった。青木は得意のミドルキックを放ちつつ、組み付くチャンスをうかがう。「どこかで相手にミスが出る」のを待っていた。しかしイザガクマエフのボディショットで展開が変わる。そこから右のパンチでダウン。
中継の解説をしていたキックボクサーの志朗によると「ストレートとフックの間(の軌道)でしたね。あれは見えない。立ち技の選手のようなパンチでした」。それほど見事な一撃だったのだ。崩れ落ちた青木にパウンドの連打が浴びせられ、レフェリーが試合を止めた。
帰国した青木にあらためて聞いた。納得はできたかと。
「胸を叩かれて吹っ飛ばされた。力が及ばなかったというのは納得できてます。後悔もない。“強いっすね”と。自分より強いヤツがいる。チャンピオンシップ戦線は見えない状態。それは納得した上で、だからやめるのかって言ったらそういうもんじゃないでしょう。そもそも相手を見て格闘技やってきたわけじゃない。自分が好きでやってるんで」
SNSには「どうってことねえよ」と尊敬するアントニオ猪木の言葉を記した。けれど何も気にせず次の試合に進むことができるかというと、青木真也はそんな“雑”な選手ではなかった。