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「ブラジルは永久にW杯優勝できない」クロアチアに負けて激辛批判「なぜネイマールに…」“メッシで4強”アルゼンチンはニヤニヤ
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byTakuya Kaneko/JMPA
posted2022/12/11 17:12
クロアチア相手に敗戦を喫し、呆然とするネイマール。ブラジル国内では超痛烈なバッシングが始まっている
スポーツ紙『オレ』はブラジル敗退を速報で大きく報じ、その数時間後に行なわれた試合でアルゼンチンが――メッシの1ゴール1アシストの活躍もあって――オランダを延長、PK戦の末に下したことを誇らしげに伝えた。
W杯でブラジルが敗退し、アルゼンチンが勝ち進む――。ブラジル人にとって最悪の出来事が2つ、同じ日に起きた。それは、アルゼンチン人にとっては取りも直さずダブルの吉報だ。延長、PK戦と瓜ふたつの経過を辿りながら、明暗がくっきりと分かれた。
ブラジル人は、普段は底抜けに明るく、良くも悪くも鷹揚で、些細なことにはこだわらない。しかし、W杯でセレソンが負けると、目の色を変えて監督や選手を糾弾する。それは、フットボールがこの国の人々にとってサンバ、カーニバルと並ぶ最大のアイデンティティーだからだろう。
1930年にW杯が創設され、1958年の第6回大会で初優勝して以来、セレソンが優勝から最も遠ざかったのは1970年から1994年までの6大会24年だった。最後に優勝したのが2002年だから、少なくとも2026年までの6大会24年間は世界の頂点に立つことができない。
ドゥンガが話していた「毎回優勝するべき」というプライド
数年前、元ブラジル代表MFで1994年の大会でキャプテンとして優勝カップを掲げた闘将ドゥンガ(1995年から1998年までジュビロ磐田にも在籍)にインタビューした際、「W杯でセレソンが優勝したのが5回だけでは少なすぎる。毎回毎回、優勝するべきなんだ」と言っていた。
「そんなにブラジルばかり優勝したら、世界のフットボールの発展にとっては良くないのでは」と反論したら、「それでも全く構わない」と真顔で言い返された。
スーパースターによって「フッチボール・アルチ」(芸術フットボール)を追求しながらも、貪欲にタイトルを求めるブラジル人にとって、「素晴らしい試合をしながら、惜しくも敗れ去った」ことなど何の慰めにもならない。
しばらくの間、国中が放心したような状態が続くのかもしれない。
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