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プロ野球PRESSBACK NUMBER
身長173cmでなぜあの打球? 高校時代の恩師に聞いた吉田正尚の強烈スイング秘話「一塁ゴロで敵が骨折」「高校時代はむしろ細いほう」
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byKYODO
posted2022/11/15 11:02
2009年夏の甲子園2回戦で安打を放つ敦賀気比の吉田正尚(当時2年)。高校入学時から驚異的な飛距離を出していた
早速、春季県大会でも大暴れした。強い打球は面白いように次々と外野手の頭を越えていき、結果、打率は7割近くまで跳ね上がった。多く語られているエピソードだが、あまりの打球の強さで吉田のファーストゴロによって某高校の一塁手が鎖骨を骨折したこともあった。
「高校1年生でそんな選手は初めて見ました。試合を重ねていくうちに見えたのは、コンタクト能力があるのに、三振も少なかったこと。あれだけ振れば三振は増えていくはずなのに。追い込まれても違うバッティングができるんです」
やがて、その“恐怖”は味方にも広まり出した。吉田のフリーバッティングが始まると、3年生たちは一塁と二塁の守備位置を外れ、その座を後輩たちに譲り出すのだ。先輩たちから恐れられるほど痛烈な当たりを飛ばしまくった。
「あのパワーは単に練習したから飛ばせるようになったわけではないと思います。生まれ持っての能力なんじゃないですかね。スイングのねじれとか、振り終わった時、体がうねっているのが分かるんです。体の回転の速さも、吉田の特徴です」
同級生の証言「高校時代はむしろ細い方」
吉田の同級生で、現在は敦賀気比でコーチを務める川下竜世の証言はこうだ。
「高校の時は体が今ほどがっちりしていなくて、むしろ細い方でした。でも着替えの時なんか見ていると、筋肉がそこまでついていなくても骨太さというか、ガチっとしているのが分かりました。あれだけのパワーは骨太なところからも来ているように思いました」
ただ、高校最後のシーズンは苦労した。対戦相手から勝負を避けられる機会が増え、歩かされることもしばしば。「四球でもいい」と切り替えられれば良かったが、そこは高校生。やはり打ちたいという気持ちが勝ってしまう。そこでさらに強く振ろうとしてしまい「ドツボにはまって調子を崩していました」と東監督は回想する。思うようなスイングができず、高校の終盤は納得のいく打撃があまりできなかった。