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〈世界体操〉エース橋本大輝+日本女子が強く美しい 「ラブリースマイル」の絶賛、当初補欠も「平均台の女神が…」平均年齢19歳の素顔
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byRyota Hasebe
posted2022/11/09 17:02
世界体操で取材に応じる宮田笙子。個人総合8位入賞、種目別平均台で銅メダルに輝いた
宮田と並ぶエース候補だった笠原有彩が左膝のけがで代表を辞退し、渡部の繰り上がりが発表されたのは、現地合宿のためチームが英国へ出発する10月15日。渡部自身も左足首を痛めていて、開幕前の練習後は手を使いながら慎重に階段を降りていたほどだった。
それでも、足首をテープでがっちり補強して臨んだ予選では起用された3種目全てで大きなミスを出さず、団体総合の予選突破に貢献した。強豪選手のミスにも助けられた平均台の種目別決勝後、田中本部長は「(渡部、宮田の)2人とも一歩一歩の積み重ね。平均台の女神が降りてきたんだと思います」と話した。
主将として大会前から他の選手たちを鼓舞し続けた深沢も、団体総合決勝こそ得意の段違い平行棒でミスが出たが、予選ではダイナミックな手放し技を決めてチームを支えた。所属する日体大で村上茉愛さんの指導を受ける坂口も、予選と団体総合決勝で演技した6度の演技全てで1番手を任され、見事な安定感で役割を果たした。
初代表5人は力を発揮し、東京五輪後の新世代も世界で戦えることを証明した。
エース橋本は頼もしさを増しつつ、団体銀に悔しさ
男子はエース橋本大輝の奮闘が光った。
両手首に不安を抱える中、個人総合は昨年2位の借りを返して初優勝し、種目別ゆかと鉄棒は銀メダル。個人総合と鉄棒の2冠を果たした東京五輪後も新技の習得に励みつつ、課題にしていた着地の精度を上げた成果を示し、内村航平の後継者として頼もしさは増した。過密日程の中で実力を示し、「よくやったと自分を褒めたい」と納得していた。
ただ、「一番悔しい」と振り返ったのが団体総合の銀メダルである。
橋本は五輪と世界選手権ではまだ団体優勝がなく、今回もチームに大小のミスが出てしまい、ライバルの中国に大差を付けられて2位に甘んじた。橋本は第2種目で課題のあん馬を成功させたが、土井陵輔と谷川翔が落下のミス。中国を追う展開の中、橋本も跳馬で着地が乱れて十分に得点を伸ばせず、「僕がもう少し頑張っていれば、もっといい雰囲気でできたのかな」と悔やんだ。
団体総合決勝の戦い方には課題が残ったものの、橋本以外も得意種目を中心に力を出した。
個人総合では谷川翔の兄、航が銅メダルを獲得した。表彰台に日本選手2人が上がるのは、2014年金メダルの内村航平と銅メダルの田中佑典以来だった。種目別の予選上位8人ずつによる決勝は、全6種目で日本選手の名前がスタートリストに載った。