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〈世界体操〉エース橋本大輝+日本女子が強く美しい 「ラブリースマイル」の絶賛、当初補欠も「平均台の女神が…」平均年齢19歳の素顔
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byRyota Hasebe
posted2022/11/09 17:02
世界体操で取材に応じる宮田笙子。個人総合8位入賞、種目別平均台で銅メダルに輝いた
ゆかはH難度の大技、後方伸身2回宙返り1回ひねりの「チュソビチナ」でダイナミックに跳躍。「女王」をイメージした振り付けは映画「フィフス・エレメント」の曲にも合い、回数を重ねるごとに拍手が大きくなった。さらに、演技後は常にはじけるような笑顔。会場の実況では「ラブリースマイル」「ビッグスマイル」とたびたび取り上げられた。「誰よりも楽しむこと」を意識したことで、英国のファンの心をつかんだ。
笑顔は人を幸せにする。
2019年の全英女子オープンゴルフで海外メジャー初出場、初優勝を果たした渋野日向子もプレー中に笑みを絶やさず、地元メディアは「スマイリングシンデレラ」と呼んだ。あの時と同じ国で、再び日本選手の笑顔が幸せを運んだ。
「自分が楽しんだことによって、たくさんのファンやいろんな人にも楽しんでもらえました。たくさんの人にも褒めてもらえて……。英語だったので何を言っているか分からなかったですけど(笑)」
脚力の強さ、大舞台にも動じない精神力、飾らないコメント……。田中本部長は宮田について、「殻を破って大物になるんじゃないかなという予感がします」と評した。
国際大会でほぼ経験のない渡部が驚きの金メダル
今大会一番の驚きを与えたのが、最終日に種目別平均台を制した渡部だった。国際大会の経験はほとんどなく、国際体操連盟の公式サイトには個人総合48位で予選落ちした2019年世界ジュニア選手権の記録しか載っていない。
出だしは前方宙返りをしながら、ぴたりと平均台に飛び乗る。難しい技を軽やかに決め、観客をどよめかせた。その後はわずかなふらつきはあったものの、宙返りやジャンプ、ターンなどをこなし、2回半ひねりの降り技も着地をまとめた。
13.600点で5人を終えて暫定トップに立つと、渡部は驚きの表情。その後は米国と中国の優勝候補2人が落下し、最後の宮田も3位の得点。初の大舞台でまさかの金メダルが決まると、涙があふれた。
強豪よりも難度を示すDスコアは低かったが、出来栄えの良さを示すEスコアは最も高く、「美しい体操」でつかんだタイトルだった。実は、平均台の上で脚はがくがくと震えていたという。
「大きい世界大会の種目別決勝に残ったのも、大きい会場で1人で演技するのも初めてだったので、今までで一番緊張しました。でも大きな失敗がなく、最後まで演技できたのは少し自信になりました」
補欠だった渡部に「平均台の女神が降りてきた」
6月までに代表入りした他の4人と違い、渡部は補欠だった。