SCORE CARDBACK NUMBER
「『航平さん!』と心の中で叫んだ」個人総合優勝・橋本大輝(21歳)は顔をくしゃくしゃにして…インタビューの“お手本”は本田圭佑?
posted2022/12/05 06:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
JIJI PRESS
体操の世界選手権が英国リバプールで開催され、昨夏の東京五輪で個人2冠に輝いた橋本大輝(順大)が、男子個人総合を初めて制した。この種目の日本人選手の優勝は内村航平が6連覇を果たした'15年以来7年ぶり。五輪と世界選手権の両方を制したのは内村に続いて2人目という快挙だった。
橋本は東京五輪の疲労があるまま臨んだ昨年10月の世界選手権で、中国の新鋭・張博恒に0.017点差で敗れて2位。今大会の男子団体総合でも中国の後塵を拝して銀にとどまり、その分、個人総合に懸ける思いが増していた。
まずはG難度の「リ・ジョンソン」をマスターしたゆかで14.666点の高得点を出すと、鬼門のあん馬をノーミスでクリア。5種目めの平行棒では不安のあった「マクーツ」を抜いて出来映え点を稼いだ。そして、最終種目の鉄棒はF難度の「リューキン」を抜く手堅い構成を選択。それでも合計87.198点という高得点を出し、2位の張を0.433点上回った。若さの勢いで押した東京五輪から成長し、勝利から逆算して技の出し入れを行える実力が身についていた。
鉄棒では降り技でピタリと着地し、「試合を締めるというのはこういうことだと思った」と会心の笑みを浮かべた。着地を止めることは金メダルを逃した昨年の世界選手権以来のテーマであり、日本代表の特別コーチを務める内村からも繰り返し言われてきた課題。「止めた瞬間、『航平さん!』と心の中で叫んだ」と顔をくしゃくしゃにして喜んだ。
インタビューのお手本は本田圭佑?
オープンマインドな性格で、世界のライバルたちとコミュニケーションを取ることにも積極的だ。大会公式映像のインタビューには英語で対応。「サッカーの本田圭佑さんが簡単な英語を組み合わせて話していると聞いたので、僕も簡単な英語を覚えて少しずつやっていこうと。新たな挑戦です」と幅広く意欲を見せる。
鉄棒の演技後には「イギリス紳士のイメージで」と、片足を後ろに引くスタイルでお辞儀をした。英国では五輪チャンピオンとして知名度も高く、満員の観衆から喝采を浴びた。今大会でナンバーワンの地位を確立した橋本。2年後のパリ五輪でも大本命となることを世界中にアピールした。