「やはりイングリッシュは香りが違います。ぜひ育ててほしい品種です」

「ラベンダーは環境の変化に弱いんです」

「先日はラベンダー畑を見に、富良野まで行ってきました。もっと早い時期に行ければ紫色だったようですが……。ちなみに、この北海道旅行ではキタキツネに4回ほど会いましたよ（笑）」

©Satoshi Shigeno

　こんな感じで、ユルい空気感で講義は進む。こ、こんな和やかな人だったとは……。

　さらにには屋鋪さん自身が記した鉄道関係の書籍を掲げながら「新橋駅をジオラマで復元したんですよ」と、気付けば鉄道トークに。休み時間になると、かつてハマスタで活躍した頃を知る年代の人から、きっとリアルタイムで現役時代を見たことがないだろう若者まで、年代や性別の分け隔てなく屋鋪さんとともにラベンダー談義をかわし、和やかな1時間半が過ぎていった。

「機関車が飾ってあるんです」「志ん朝師匠は…」

　講座を終え、屋鋪さんの車に乗せてもらいながら、取材スペースまでの移動で雑談した。

　桜木町駅前を通過すると「ほら、ここに110形蒸気機関車が飾ってあるんですよ。日本初の鉄道は『新橋－横浜』間となっていますが、当時の横浜駅は現在の桜木町駅だったということで、このビルの1階に置かれているんです」と、いきなり深い鉄道愛を披露してくれた。さらに……。

「落語も好きなんですよ。（古今亭）志ん朝師匠はナンバーワンですよね。先輩から薦められたのがきっかけですね。遠征の移動中にはカセットテープで聞いたり、（横浜スタジアムの近くにある）関内ホールであった落語会にも足を運んだりしました。それと、家ではクワガタを飼っていたりもするんですよ」

　こちらの想像以上に色々なことに興味を持っている人だった。プロ野球選手はラジコンや自動車、釣りなどの趣味にのめり込むとはよく聞く。しかし屋鋪さんほど趣味の幅が広い人もいないのでは……。あらためて取材場所に到着して、ラベンダーやハマったきっかけについて聞いてみた。

「もともと、山野草など植物栽培が好きだったんです。横浜山草会というグループに入っているほどなんですよ。その流れから3年前くらいに知人から『濃紫早咲』という品種のラベンダーをもらったんですが、それを枯らしてしまった。心から残念に思うとともに、“今度こそしっかりと育てられないか”と本腰を入れたんです。近くにラベンダーを栽培している場所があるので、取材後はそこで撮影してもらえればと思います」

鉄道専門誌の誌面記事コピーも見せてくれた

　趣味への愛情は尽きない。「そう言えばラベンダーとともにSLも……」とこちらが言い終わらないうちに、屋鋪さんは「その話も聞いてくださいますか」と相好を崩してクリアファイルを取り出した。そこから出てきたのは鉄道専門誌『レイルマガジン』の誌面記事コピーだった。

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