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スポーツ百珍BACK NUMBER
元大洋で盗塁王3回・屋鋪要63歳「ラベンダーを栽培している場所を…」「ここに蒸気機関車が」斜め上な趣味人になったワケ
posted2022/11/06 11:00
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
Satoshi Shigeno
プロアスリートが引退後、向き合うことになるセカンドキャリア。その競技のプロ指導者や解説者として携われる人はひと握りだし、監督、コーチに就任しても契約満了や解任など“競争”が待ち受けている社会である。
気持ち的に張り詰めるところはきっとあるだろうな……そんな想像は容易い中で、昨年6月、1つの新聞記事を目にした。
「屋鋪さんがラベンダー育むワケ」
取り上げられていたのは、屋鋪要さん。77年のドラフト会議で大洋ホエールズにドラフト6位で入団すると、スイッチヒッターに転向して2年目から徐々に出場機会をつかむ。そこから高木豊、加藤博一、屋鋪の「スーパーカートリオ」が結成され、86~88年まで3年連続盗塁王に輝くなど、大洋の看板選手の1人となった。
子供の頃やってた野球ゲームでも簡単に出塁+盗塁できるから、よくお世話になったなあ、と懐かしく感じるとともに……その屋鋪さんがなぜラベンダーなのか、である。読み進めていくと、植物栽培にハマった流れで、数年前からラベンダー栽培にも没頭していったという。
「次の日曜日がラベンダー教室ですので」
そう言えば確か、鉄道好きの友人から「屋鋪、今やSLカメラマンなんだよ」と聞いたことがある。
具体的にどんな活動をしているんだろう? と検索してみたところ、実際に自身のYouTubeチャンネルを立ち上げ、青空の下で嬉しそうにラベンダーと鉄道について語っている。横浜スタジアム、巨人移籍後は東京ドームでアグレッシブなプレーを見せていた屋鋪さんがこんな風になっているのか……と衝撃を受けた。
球界では珍しい「趣味人」である屋鋪さんだが、ラベンダー栽培講座を横浜の「よみうりカルチャー横浜」で実施しているという。63歳となった現在は、趣味とどう向き合って生活しているのか、もしよかったらラベンダー講座を取材しつつ話を聞かせてもらえないか、と問い合わせてみると、数日後に携帯電話が鳴った。
「もしもし、屋鋪です」
その声は若々しく、大洋戦のヒーローインタビューで聞いた記憶のあるハッキリとした声だった。
「次の日曜日がラベンダー教室ですので、そのタイミングでご取材に来られるようならどうぞ」
「やはりイングリッシュは香りが違います」
その約束から数日後の昼下がり。屋鋪さんは横浜駅にほど近いビルの一角にいた。和気あいあいとした教室の中で、ラベンダー色のマスクをつけながら話し始める。