猛牛のささやきBACK NUMBER
「ずっと弱かったんで」オリックス日本一の夜に比嘉幹貴(39歳)が噛み締めた想いとは? 低迷期を知るベテランの「こんな日が来るとは」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNanae Suzuki
posted2022/11/03 11:03
日本一歓喜の瞬間、若手たちよりも高く跳び上がるオリックス比嘉幹貴(39歳)。低迷期を知るベテランの言葉はズシリと重い
「シーズンと変わらずって感じです。別に絶好調でもないですけど、悪くもない。いつもと変わらず、バッター1人1人。(意識しているのは)腕振っていこうというぐらいですね。負けていても、『オレが流れを持ってくるぜ』なんてまったく思ってないし、一生懸命3人を抑えることだけ。結果は後付けだと思ってるんで。負けていても勝っていても、やることは変わんないんで。だって変わんないじゃないですか。投げるだけですから。状況によって、ゴロを打たせようとか、低めに投げようとかはありますけど、それぐらいですね。その時その時一生懸命やるだけ」
シーズン終盤の優勝争いや日本シリーズで一躍注目を集めた若手リリーフ、宇田川優希や山崎颯のような160キロ近い剛速球はないが、右サイドスローの独特のフォームから、低めに丁寧に、絶妙な変化をつけながら打者を翻弄する職人技は見事だった。
そんな比嘉は宇田川や山崎颯をどんなふうに見ているのかと尋ねると、「とんでもないですよね」と笑いながらこう言った。
ADVERTISEMENT
「すごすぎるんで、もう全然、負けないぞとも思わないし、負けてるとも……。そりゃスピードとかは絶対負けてますけど、役割が違うと思うんで。自分の役割をまっとうしようって感じです。面白い子たちがいっぱいいるので、ブルペンの空間楽しいなーと思ってますね」
比嘉と平野が作る“チーム・ブルペン”の空気
若手投手からは、若手が伸び伸びとやりやすいブルペンの雰囲気を、ベテランの比嘉や平野佳寿が作ってくれているという話をよく聞く。そのことを伝えると、「別に(雰囲気を)よくしようと思ってはいなくて、僕と平野がずっとしゃべってるだけですよ」と謙遜していたが、“チーム・ブルペン”への愛着は強い。日本一を決めた第7戦のあと、感慨深げにこう語った。
「みんな仲いいし、別にライバルとも思ってないし、本当にチームが勝てるように、“チーム・ブルペン”として頑張ろうと常々みんなでやってきた。その結果として今日、日本一になれたのでよかったです」