精神的に張り詰め続ける7試合

「日本シリーズは短期決戦と言われるけどそうじゃないんです。精神的に張り詰め続ける7試合。むしろあれほどの長丁場の戦いはないんですよ」

　V9の現役時代から監督としても日本シリーズを何度も経験している長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督は、こうシリーズの難しさを語っている。

「その長い戦いの中で、調子に乗り続けられた脇役の選手がラッキーボーイになる。ただチームの大黒柱を担って、常に結果を求められる中心選手といのは、実はシリーズを通してコンディションやバッティングの状態を維持するのは並大抵のことではないんです」

　歴代1位のシリーズMVP4度受賞の実績を持つ長嶋監督ならではの経験談だった。

ヤクルト村上は絶好調スタートだったが…

　村上の今シリーズは絶好のスタートだった。

シリーズ第1戦で9回にダメ押しの本塁打を放ったヤクルト村上　©Nanae Suzuki

　神宮球場での第1戦では1点差に迫られた8回に、オリックスの息の根を止めるダメ推し本塁打を左翼席に叩き込んだ。そして京セラドームに場所を移した第3戦でも6回に放った右翼線二塁打で先発左腕の宮城大弥投手をマウンドから引きずり下ろすと、9回1死一、二塁からこれまたダメ押しとなる右中間二塁打と結果を出してきた。

　ただ、その一方で悪いときの兆候でもある右方向へのゴロアウトが、このシリーズではすでに7つと多いのも気になるところだ。

　第4戦と第5戦の2試合では、9打席7打数無安打で3三振と安打も止まってしまっている。このシリーズでは走者を置いた場面でたびたび打席に立っているが、得点圏打率は2割5分（8打数2安打1四球）といつもの勝負強さは見られていない。

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