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「吹っ切れました」オリックス吉田正尚が土壇場でみせた劇的弾! 逆境を切り開く4番の仕事とは何か「感無量です」《日本シリーズ熱闘》
posted2022/10/28 18:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
劇的、あまりに劇的な結末だった。
日本シリーズ第5戦は1勝2敗1分と、負ければ王手をかけられる土俵際に追い込まれたオリックスが、主砲・吉田正尚外野手のドラマチックなサヨナラ本塁打で対戦成績をタイに持ち込んだ。
4番とはどういうものか。その存在感を最高の形で示した一撃だった。
1点のリードを許した9回。ヤクルトは守護神、スコット・マクガフ投手をマウンドに送り出して万全の逃げ込み態勢を図ったが、そこから綻びが始まった。
そのマクガフがいきなり先頭の代打・安達了一内野手を歩かせる。送りバントの1死二塁から、2番・西野真弘内野手が放った当たりそこね、ボテボテのゴロがドラマの始まりだった。この打球をマクガフがお手玉。さらに間に合わない一塁に投げて、これが悪送球となって一気に安達が同点のホームを駆け抜けた。
完璧な打球で「感無量です」
そして中川圭太外野手が三振に倒れた2死一塁で、打席に背番号7が入る。
初球、149㎞のストレートが内角低めに決まって1ストライク。そして2球目のフォークが高めに浮いたところを吉田が見逃さなかった。
完璧な打球だった。
打った瞬間に2歩、3歩、ゆっくり歩き出した吉田が、サヨナラ弾を確信して歓喜に沸く一塁ベンチに右手の人差し指を突き出した。見上げた打球が京セラドーム大阪の右翼5階席のスタンドに跳ねる。そこから両手を広げてゆっくりと3つのベースを蹴ったヒーローが、ホームに戻る。ペットボトルを手にするナインの輪にダイブすると、容赦ないウォーターシャワー(お茶もあり!)が降り注いだ。
「感無量です」
お立ち台の吉田の声はさすがに興奮を隠せない。