終わりよければすべてよし。そう言えたら最高だったが、勝負の世界はそれほど簡単ではない。

　自らのサーブから流れを引き寄せた1次ラウンドでは勝利を収めたが、ベスト4入りを懸けた準々決勝で再戦したブラジルには2対0からフルセットの末に敗れた。しかも最後の「1点」は自らのスパイクミスで、難しい体勢、状況ではあったが、レフトから打ちに行ったスパイクがネットにかかった。

　床を叩き、悔しがる。涙を流しながらも静かに悔しさを噛みしめる姿の印象が強いせいか、感情を露わにする石川の姿は新鮮で、それだけでも新たなステージに足を踏み入れようとしていることが十分伝わってきた。

　何より、あの1本、1点はこれからにつながる。石川自身もそう確信していた。

「フェイントしてチャンスボールから相手に点数を取られるよりも、逃げずに打ち切りたかったんです。決めることはできなかったけれど、この1本、悔しさが次につながる、もっとできる、と思えたし、自分自身を成長させてくれる1本だった。前ならば絶対に、決められなかったことだけをネガティブに考えていたけど、今はすごく前向きにとらえられています」

髪型は「開幕まで内緒（笑）」

　29日に開幕するVリーグも同様だ。世界選手権と同様の活躍を、と東レアローズ（V1女子）のエースとして注目やプレッシャーを背負うだろう。それも含めて「楽しみ」と笑う。

「たくさんの方に見ていただけるのはすごくありがたいことだし、むしろ見てもらいたいとこれまで以上に思うようになりました。プレッシャーもある中で結果を出すことが自分の成長、来年のオリンピック予選にもつながる。バレーボールの面白さをたくさんの人に伝えたいです」

　そしてもう1つ、新たな見どころもある。

「髪型どうするんですか？ ってめっちゃ聞かれるんです（笑）。だから開幕まで内緒。どんなスタイルで出てくるか、楽しみにしていて下さい（笑）」

2021年全日本選手権・決勝　©︎Naoki Morita/AFLO SPORT

　背負う期待も、プレッシャーをも前向きに。満面の笑みで迎える、新たな始まりはもう間もなくだ。

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