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27歳で引退…Vリーグファイナリストが異例の“社業専念”「遥輝に決めさせたい」相棒セッターが目指した“憧れのコンビ”とは?
posted2023/04/27 11:01
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Noriko Yonemushi
リーグ3連覇を果たして花道を飾る――その一念で臨んだファイナルだったが、人生思い通りにはいかないものだ。
4月23日に行われたバレーボールのV.LEAGUE DIVISION1 ファイナル。サントリーサンバーズのミドルブロッカー小野遥輝は、アップゾーンから最後の瞬間を見つめた。3連覇まであと1勝、届かなかった。小野は先発したが、ウルフドッグス名古屋の堅いブロックとディグの前に決定率が上がらず、第2セット途中に交代となっていた。
これまでなら、次にやり返すため、ファンの間で「ニコイチ」と呼ばれるセッター大宅真樹とのコンビをさらに磨いてリベンジしてきたが、もう“次”はない。
今年2月の引退発表には誰もが驚いた。まだ27歳と若く、3連覇を目指すチームのレギュラー。しかも昨年は日本代表にも登録され、8月のAVCカップ準優勝に貢献していた。同じく引退を発表した34歳の栗山雅史が「あいつの引退がサプライズすぎて、俺の引退が薄れる」と苦笑していた。
なぜ27歳で引退を決断したのか?
小野は社業に進むため、自ら引退を決断した。
「もともと早めに辞めて社業にとは思っていたんですけど、パフォーマンスが落ちてきたと感じるし、モチベーションのことも。仕事(社業)をしたいと思いながらバレーを続けるのは、気持ち的に、なんかまとまらなくて。本当にプレーできなくなって終わるより、自分でケツを決めたいと思ったのも理由です」
もともと社業に強い意欲を示していた。入社まもない頃、バレー選手としての目標は?という問いに、こう答えていた。
「正直そんなにモチベーションは高くないですね。サントリーでやれていることで結構、まあいいかなと思っちゃっているので。代表も、身長が低いからVリーグで活躍したとしても選ばれないと思うので、あまり視野には入れていません。どちらかというと早く仕事に就きたい。この身長だし膝も悪い、こんな体なんで長くは続けられない。5年やれれば、という感じなので大きな目標はないです」
早く社業に行きたいと、ここまでハッキリ言う選手は初めてで驚いた。身長187cmとミドルブロッカーとしては小柄なこともあり、どこか諦めたような口調。数年ベンチを温めて引退していく姿が浮かんだ。
だがリーグが始まると、そんなイメージは吹き飛んだ。