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新チーム発表翌週に骨盤骨折も…「不死鳥」39歳や元F1レーサー片山右京らが本気で「日本初のツール・ド・フランス」を狙うワケ
text by
赤坂英一Eiichi Akasaka
photograph byJAPAN CUP CYCLE ROAD RACE 2022
posted2022/10/26 17:01
JCLで片山右京らが創設した新チームは本気でツール・ド・フランス出場を狙っている
「チームとしては序盤から後手に回りましたね。何とか振り出しに戻そうということで、アベタカ(阿部嵩之、36)が中心になって、集団を引っ張ってくれました。前(のチーム同士)でも結構牽制が入っていたみたいで、そんなにペースが上がることなく、振り出しに戻すことはできたんですけど」
そんな中、先に見せ場を作ったのは、先頭集団で「チームの仕事」に徹していた岡だ。標高差185mの最高地点、古賀志山山頂の前で集団から抜け出し、先頭に出ると、3周回ごとに設定された山岳賞ポイントをゲット。沿道で鈴鳴りになっているブリッツェン時代からのファンを大いに沸かせた。
前日は平坦路のクリテリウムで3位に入賞して、この日はロードレースで山岳賞。日本屈指のオールラウンダーの面目躍如だった。
僕にとっても、忘れられないレースになりました
岡は7周回、8周回ともに全体の3位と、チームメートを牽いて快調に飛ばす。後方には、優勝を狙うニールソン・パウレス(26)、アンドレア・ピッコロ(21)がいた。
9周回目では、岡の師匠・増田も負けじと山岳賞を狙って集団から飛び出した。距離1km、平均斜度8%、最大斜度14%の「激坂」を、38歳のクライマーは苦しげな表情も見せず、軽やかなペダリングで上っていく。
「狙ってたわけじゃないんですよ。あの周回では、集団で上りに入っていったんで、ここから飛び出せばいけると思ったら、もう身体が勝手に動いていました。やっぱり、地元のレースですからね。(ブリッツェンの)誰かがこれ(山岳賞)を獲らないとって責任感もありました」
この時、沿道の観衆から沸き起こった盛大な拍手が、自転車ファンと宇都宮市民の間に根付いた増田の人気を物語る。増田も下りに入りながら笑顔を浮かべ、左右の観衆に手を振った。
ブリッツェンの選手として獲得したラスト山岳賞。生で見たファンには一生の思い出になっただろう。レース後にそう水を向けたら、増田も照れ臭そうにうなずいた。
「僕にとっても、忘れられないレースになりました。ああいう(手を振る)のも、自然に出ちゃうんですよ。レース中に手を抜いてるわけでも、余裕こいているわけでもないんだけど、何かこう、みんなに応えたくて。本当に、僕はファンのみなさんのおかげで続けてこられましたから。最後にひとつだけ、形に残るもの(山岳賞)を獲れてよかった」
そう語った増田のリザルトは27位。「そこはちょっと悔しかったかな」と言いながら、晴れ晴れとした表情だった。
30歳超えてから下火になる選手もいる中で…
優勝は岡がアシストしたEFのパウレスが優勝。ピッコロが2位に入り、チームでワンツーフィニッシュを決めている。岡自身は29位でレースを終え、胸を張って言った。
「終盤にきて、チームのエースたちが本当に強かった。パウレス選手が調子よくて、ピッコロ選手もずっと好調を維持していましたしね。僕は最後、いい形でバトンタッチができました。自分はやるべきことをやれたと思います。きょうのワンツーは、チームみんなが機能して、助け合った結果ですね」
そう語る岡が、ブリッツェンで学んだことは何だろう。