酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
5時間超死闘に観客「明日早番なのに~」今年も神回な日本シリーズ2戦おさらい… オリ中嶋監督の“物語”vsヤク高津監督の“執念”
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNaoya Sanuki
posted2022/10/25 17:02
2年連続でシビれる戦いとなっている日本シリーズ。中嶋監督と高津監督の采配の妙も見逃せない
4回にはまた先頭のオスナが一発を打つ。この球は山本らしからぬ高めの力のないカットボール。山本はマウンドが合っていなかったとの報もあるが、「今日は勝手が違う」と思ったかもしれない。次の回で脇腹の違和感を訴えて降板するのだ。
それでもオリックスは8回に、代打T-岡田のタイムリーで1点差に迫る。
中嶋監督は“全然振れていない選手”を思い切って起用して結果につなげることが結構ある。CSファイナルでは、BS放送で解説の星野伸之さんに「ミットにボールが入ってから振ってますねえ」と指摘された杉本裕太郎を起用した。
そんな彼はCS第2戦で決勝のホームランを打った。このときの杉本のホームラン確信歩きは、「村上宗隆かよ」と思わせるほどたっぷり間を取ったものだった。CSでのT-岡田は、安打が出る雰囲気がしなかったが、日本シリーズの大舞台で34歳のベテランは「軽打とはこう打つんだ」とばかりの渋いタイムリーを打ったのだ。
追い上げムードを断ち切ったのは、やはり村上
これでヤクルトの4-3、「さあ、追撃だ」とばかりに中嶋監督は8回に、本来クローザーの平野佳寿をマウンドに上げる。
CSでは、中嶋監督は阿部翔太を最終回に上げていた。後半戦、やや疲労が見える38歳の平野をこのシリーズではクローザーではなく、中継ぎで起用する意向のようだ。しかし、守護神平野に絶対の信頼があるのは変わらない。
ところがヤクルトは、平野に対し先頭の村上が低い弾道でとどめの一発を打つのだ。さすが三冠王ではあるが、この試合、高津監督は中嶋監督の「物語」をすべて打ち消していたかのようだった。
試合時間3時間48分、満員御礼入場者 29,402人のお客はしょっぱなからおなか一杯になって家路についただろう。
「打てる投手」山﨑福の起用が当たった
<第2戦>
オ002010000000|3
ヤ000000003000|3
<本塁打>
内山壮1号(ヤ)
<バッテリー>
オ:山﨑福-山﨑颯-宇田川-ワゲスパックー阿部-本田-比嘉-近藤/伏見
ヤ:サイスニード-大西-石山-今野-マクガフ-清水-田口-木澤/中村
迎えた2戦目、中嶋監督は陣容を大きく変えた。1番に安達了一、6番にT-岡田とベテランを起用した。安達は今年、体調が思わしくなく65試合しか出ていないが、守備の要であり、打撃もしぶとい。そして先発は山﨑福也、ローテの5番手であり、同じ左腕でも宮城大弥だろうという大方の予想の裏をかいた形だ。