Jをめぐる冒険BACK NUMBER
〈パリ世代欧州組〉斉藤光毅と田中聡に現地で直撃「もちろんW杯に出たい。ただCL決勝で…」「遠藤航さんみたいに」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2022/10/24 11:04
それぞれオランダとベルギーで研鑽に励む斉藤光毅と田中聡に現状を聞いた
発煙筒が焚かれるダービーでフル出場した田中聡
10月15日、ベルギー・コルトレイク――。
首都のブリュッセルからインターシティで西へ1時間ほど走ると、コルトレイク駅に到着する。街の中心部から歩いて15分くらいのところに、収容人数7000人弱のグルデンスポーレン・スタディオンはある。
その日、スタジアムはズルテワレヘムとのダービーマッチに沸いていた。発煙筒がばんばん焚かれ、両チームのサポーターがチャントを歌いながら、罵り合っている。
そうした熱い雰囲気のピッチに、田中聡の姿があった。
8月28日のスタンダール戦で途中出場してデビューを飾ると、9月3日のオイペン戦から連続してスタメン出場を果たしている。この日も2ボランチの一角としてフル出場したが、チームは先制しながら後半に入ってセットプレーから立て続けに失点し、1-3で敗れてしまった。
試合後、数人の記者のあとを付いていくと、ホームゴール裏のスタンド下にある狭い通路に入っていった。まるで屋根裏部屋のような薄暗いその場所こそ、ミックスゾーンだった。
しばらくして姿を現した元FC東京の渡辺剛(21年12月に加入)と会話をかわしていると、扉の向こうから田中が顔を出した。
移籍を決断するまでは本当に悩みましたね
湘南ベルマーレに所属していた田中は今夏、急転直下でコルトレイクにやってきた。
「今夏の移籍はもうないと聞いていたので、突然のオファーでびっくりしました。行ったほうがいいとか、まだ早いんじゃないかとか、いろいろな意見をいただきました。決断するまでは本当に悩みましたね。ベルマーレで何かを成し遂げたわけではなかったので。
夜中まで考え込んだり、寝る前に目をつぶりながら考えたり。最終的には、海外でプレーすることが夢だったので、夢が目の前にある状況で、行きたいという気持ちで来ました」
田中といえば、デュエルやボール奪取力、運動量を武器に中盤を仕切るタイプのボランチだ。この日も相手の大柄な選手たちと対等にやり合っているように見えたが、本人には納得のいかないプレーもあったようだ。
「こっちにはデカい選手、速い選手、いろんな特徴の選手がいるので、毎試合面白くて刺激になっています。個の能力が高い選手が多くて、今日もボールを取り切れそうな場面で奪えなかったり、スピードで抜かれたりしたシーンがあった。自分のストロングが出せないときもあるので、もっとこっちの強度に慣れていきたいと思います」
なかでも田中が今、課題にしているのが、的確なポジショニングだ。湘南時代は感性や感覚でプレーしていたが、チーム内である程度オートマティズムが確立していたため、ボールが自然に集まってきた。