猛牛のささやきBACK NUMBER
妻子いる28歳が念願のドラフト指名→30歳の新人王候補…オリックス阿部翔太「新人王はいいんです。日本一になれたらそれでいい」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/20 11:09
リーグ優勝に貢献したオリックス阿部翔太投手(29歳)。“渾身のガッツポーズ”は日本シリーズでも見られるか
1球目から全力で入るにはどうすればいいかを試行錯誤し、マウンドでの5球の投球練習をルーティン化した。
「ピッチャーってやっぱり1球目は、『ストライクちゃんと入るかな』と思ってしまうところがあるので難しいんですけど、そこをマックスで行けるように。僕の5球は、ストレート、ストレート、次はカーブ。カーブは試合ではあまり使わないんですけど、フォームを調整するにはカーブがいいので、絶対に1球入れるようにしています。カーブはごまかしがきかない変化球だと思う。カーブをある程度ストライクゾーンに投げられる時は、バランスよく投げられている証拠なので、キャッチボールも最初カーブから入るんです。
それから4球目はスプリット、最後の5球目はマックスでストレート。コントロール関係なく、マックスに腕を振って、全力で1球投げる。それをすごく大事にしています」
そのルーティンを確立し、4月8日に一軍に昇格してからは、19試合無失点を続けた。無死満塁のピンチでマウンドに上がり、無失点で切り抜けるなど、ピンチでの強さは相変わらず。渾身のガッツポーズがトレードマークとなり、ファンの間で「阿部ガッツ」「ガッツしか勝たん」というワードが生まれた。
もうすぐ30歳、新人王は「知名度がなさすぎる(笑)」
終盤の優勝争いの中でも安定した投球を続け、宇田川優希や山崎颯一郎といった若手が勢いに乗る中、レギュラーシーズン最終戦や、ソフトバンクとのCSでは9回を任された。
中嶋聡監督が、「(打順が)ここで終わったから、(次の回は)こっちのほうがいいんじゃないの?という話をしながら、臨機応変にやっている。あまり固定はしません。ただそれは平野が、最後のほうちょっと状態が悪くなったからそうなっているだけであって、いつもの状態だったら普通に……」と語るように、あくまでも守護神は平野。だが阿部に対する信頼は厚い。
「無駄にフォアボールを出さないし、しっかり計算して投げている。だからコースを間違えない、高さを間違えない。そういうことをしっかりやっている」
11月3日に30歳を迎える阿部は、新人王候補にも挙げられる。獲得すれば最年長受賞となるが、本人はこう笑い飛ばす。
「西武の水上(由伸)君はタイトルも取ったし、それにテレビで“主な新人王候補”と出てきた中に自分の名前は載ってなかった(笑)。みんなにいじられるんですけど、だいたいいっつも載ってないんで、まあ無理やろなーと思ってます。知名度がなさすぎるから(笑)。いいんです。日本一になれたらそれでいい。そのために必死でやりたいと思います」
日本シリーズでも変わらぬ度胸満点のピッチングで、日本一と、知名度を、手に入れる。