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〈ドラフト〉“安定したサラリーマン生活”を捨てた21歳… 独立L愛媛で指名を待つ“強打の捕手、190cmスピンが利いた右腕”とは 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2022/10/17 20:01

〈ドラフト〉“安定したサラリーマン生活”を捨てた21歳… 独立L愛媛で指名を待つ“強打の捕手、190cmスピンが利いた右腕”とは<Number Web> photograph by Kou Hiroo

独立リーグ愛媛の玉置隼翔(左)と上甲凌大。ドラフト指名を待つ

これまでの野球人生で、今が一番いい感じ

 今季は21試合6勝3敗1セーブ125回130奪三振64与四球、防御率1.73。完封も2回記録した。数字的にも見違える成長ぶりである。前半戦は好投しても勝ち星に恵まれなかったが、後半戦だけで5勝する活躍を見せた。後半戦に調子を上げる選手はNPBのスカウトの目に留まりやすいと言われる。

「平井諒投手コーチがいろいろアドバイスしてくださいます。技術的なことも多いですが、僕は昨年、打ち込まれる試合が多くて、心が折れそうになった。なので、特に“気持ちの持ちようとか、こう考えろ”というアドバイスをしていただいて、メンタル面でも成長したと思います。ただ調子が悪くなったらまた心が折れないかな、と心配はしています」

 大きな体だが、言葉の端々から正直で善良な人柄がにじみ出る。松山市内の寮で一人暮らしだが、両親は「やりたいだけやれ、頑張れ」と励ましてくれると言う。

「これまでの野球人生で、今が一番いい感じです。自分の投球スタイルもわかってきました。去年なんかは、無茶苦茶に投げて打たれていたんですが、こうすればよくなるというのがわかってきたので、手がかりをつかんだ感じですね。

 平井コーチからは“スカウトが見に来ているから頑張ろうとかじゃなくて、やっぱり自分を評価するのは自分自身だから”と言われて、自分が納得するような投球をして、その結果としてドラフトで指名されればいいな、と思っています」

 独立リーグからNPBに行く投手は、ほとんどが救援投手で起用される。ただ玉置の場合、例えば投手の育成に定評がある吉井理人氏の監督就任が決まったロッテあたりが「素材」として、少し時間をかけて育成すれば、ローテの一角を担うようにならないか――と思う。また7回あたりを任せられる救援投手の口もあるだろう。

都市対抗で「2打席連発」の21歳捕手はなぜ独立Lに?

 上甲凌大(じょうこう・りょうた)は21歳の捕手である。

「宇和島東高から、社会人野球の伯和ビクトリーズに入りました。3年間在籍して、今年愛媛に来ました。高校時代はプロ志望届は出さなかったんですが、スカウトの方には何人か声をかけていただいて、プロを意識するようになりました。

 社会人野球では午前中はしっかり仕事があって午後から野球という毎日でした。僕は大学に行けば今年が4年生にあたるんですが、とにかく野球に集中してレベルアップし、勝負を懸けたいなと思って、独立リーグに来ました」

 打てば響くという感じで、言葉の端々から快活な性格であることがにじみ出てくる。2021年の都市対抗野球では2打席連続本塁打を放った成績を残している上甲だが、なぜ独立リーグに入団したのかを聞いた。

「社会人のときは年数を重ねたチームの軸となるキャッチャーの方がもうずっと出続けるって感じだったんで、1年目は捕手としては出場がほとんどなくてDHや代打がメインでした。それでも2年、3年と経てば、捕手としての起用が増えてくるかなと思ったんですが、ずっと先輩の方がマスクを被っていたので、これではダメだなと思ったんです。

 ただ、打つ方は社会人時から自信あって、バッティングだけは負けないなと思っていた。なので“捕手がダメなら、DHでもレフトでもいいから出させてください”と監督に言っていました」

――社会人と独立リーグの野球はどう違うのでしょうか?

【次ページ】 安定したサラリーマンの生活を捨てての“勝負の年”

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