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〈ドラフト〉“安定したサラリーマン生活”を捨てた21歳… 独立L愛媛で指名を待つ“強打の捕手、190cmスピンが利いた右腕”とは

posted2022/10/17 20:01

 
〈ドラフト〉“安定したサラリーマン生活”を捨てた21歳… 独立L愛媛で指名を待つ“強打の捕手、190cmスピンが利いた右腕”とは<Number Web> photograph by Kou Hiroo

独立リーグ愛媛の玉置隼翔(左)と上甲凌大。ドラフト指名を待つ

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広尾晃

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湯浅京己や藤井皓哉の活躍もあって、ドラフト会議では独立リーグ所属選手の指名にも注目が集まる。徳島・愛媛で指名を待つ選手たちの思いを聞いた(全2回の2回目/徳島編からの続き)

 独立リーグ四国アイランドリーグplusは4球団ながら62人と、8球団のルートインBCリーグの58人を上回るNPBドラフト指名選手を輩出している。しかし、愛媛マンダリンパイレーツは2011年に土田瑞起(投手、引退)が育成で巨人に指名されたのを最後に、NPBに人材を輩出していない。これは球団にとっての大きな課題となっている。

 今季から監督が河原純一から弓岡敬二郎に代わったが、弓岡も「優勝争いもさることながら、人材育成を」と口にした。

 そして「うちにもNPBに行けそうな素質を持った選手は2~3人はいるんですよ。スカウトからも声がかかっているし、調査書(NPB球団からドラフトの前に独立球団に送付される「身上調査書」)ももらうとは思うんですが、そこからが難しいんですね」と言った。

 今年、四国アイランドリーグplusの他球団を回っていると「今年は愛媛にええ選手いるやない。キャッチャーとピッチャーと」という声を聞いた。つまり、久々に愛媛からドラフト指名されそうな選手が出てきているのだ。

レベルの違いに一時は気持ちが折れそうに

 玉置隼翔(たまき・はやと)は、今年が2年目。190cm83kgの長身で「スピンの利いた速球は結構ええと思うけど」と弓岡監督も期待を寄せている。玉置自身は現状をどう捉えているかを聞いた。

「和歌山県の出身で、中学はリトルシニアで全国大会に行きました。高校は和歌山東でプロ志望届を出したのですが、ドラフト指名はありませんでした。諦めきれない気がしていましたが、僕には大学の選択肢はなかったので、高校の監督さんがいろいろ探してくださって、愛媛に行くことにしました」

 最近「プロに行きたいから独立リーグを選択する」という選手が結構いるが、彼もそのひとりだったのだ。しかし1年目の玉置にとって独立リーグは厳しい環境だった。

「独立リーグには大学や社会人から来ている選手もいます。高卒1年目の僕とは違う世界という感じでした。去年、球速は140km/hほどでしたが、レベルの違いに一時は気持ちが折れそうになりました。でも、もう一度やり直してみようと思い直した。とにかくパワーアップせなあかんと思って、去年の12月にトレーナーさんのところに1カ月通い詰めて体を一から鍛え直しました」

 昨年、玉置は8試合1勝6敗36回21奪三振17与四球、防御率8.00。7回先発のチャンスが与えられたが、期待に応えることはできなかった。

「トレーナーさんのところに通っているうちに、少し球が変わってきた実感があったので、ちょっと希望が湧いてきました。今年になって計測したら球速は148km/hまでアップしていました。球種はカーブ、スライダー、フォーク、ツーシームです。組み立てはまっすぐを見せてフォーク、スライダーで三振を取ったり、変化球を見せてまっすぐで三振を取るパターンですね。特に縦・横2種類のスライダーが武器ですね」

【次ページ】 都市対抗で「2打席連発」の21歳捕手はなぜ独立Lに?

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