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「ルメールの腕をもってしても…」秋華賞の勝負の分かれ目は“スタート”だった…スタニングローズと坂井瑠星は一気にブレイクの予感
posted2022/10/17 17:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Photostud
3歳になってから唯一の敗戦がオークスの2着という良血馬が、見事、「一族の忘れ物」を手に凱旋した。
牝馬三冠の最終戦、第27回秋華賞(10月16日、阪神芝内回り2000m、3歳牝馬GI)で、坂井瑠星が騎乗した3番人気のスタニングローズ(父キングカメハメハ、栗東・高野友和厩舎)が優勝。3代母が3着、2代母が2着に惜敗したレースで、「バラ一族」による2つ目のGIタイトルを獲得した。
半馬身差の2着は2番人気のナミュール。史上7頭目の牝馬三冠獲得にリーチをかけていた1番人気のスターズオンアースは3着に敗れた。
スタートが勝負の分かれ目だった
勝負の分かれ目はスタートだった。
7番のスタニングローズがゲートからの1完歩目と2完歩目で外にヨレて、隣の8番ナミュールを外に押圧する格好になった。ナミュールは馬1頭分ほど外に押し出されたが、大きくバランスを崩すことなく走りつづけた。
スタニングローズの坂井は2、3完歩目ですぐさま手綱を右(内)に強く引いて軌道を修正し、他馬への押圧も、自身のロスも最小限にとどめた。
ナミュールの外の9番枠を引いていたクリストフ・ルメールのスターズオンアースは、前躯を沈めるような格好でゲートを出て、1馬身ほど立ち遅れてしまった。すぐにリカバーしたかったところだったが、正面には、内から弾かれてきたナミュールがいて、その外の10番アートハウスも横並びのスタートを切っていたため、通り道がなかった。
しかし、ルメールは、前が塞がった状態になったからといって、手綱を大きく引いて減速するのではなく、逆に、追っつけて加速しようとしていた。
厳しくなったスターズオンアースの位置取り
出遅れには大きく分けて2つのパターンがある。ひとつは他馬に挟まれて行き場をなくして騎手が手綱を引くパターン。もうひとつは、躓いたり、立ち上がったりして、自分で出遅れるパターン。今回のスターズオンアースは、後者だった。