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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「川島永嗣さんはマジで凄い」「30なんて、始まったばっかでしょ」シュミット・ダニエルが語る“世界的GK”とW杯への思い
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/10/29 11:01
エクアドル戦でのシュミット・ダニエル。自身にとって初となるW杯出場に向けて、ベルギーの地で研鑽に励んでいる
――味方の調子もありますからね。メキシコ戦だって先制していれば、完封勝利だったかもしれない。そこは達観というか、仕方ないなと割り切れるようになりました?
「割り切れるようになってきました、ようやく。そこがベルギーに来て変わったところかな」
W杯最終予選をベンチで見ていて感じたこととは
――シント=トロイデンで残留争いをしたり、苦しい時期を経験してきた。その中で切り替える術を磨いていった?
「そうですね。自分に言い聞かせて、気持ちが切り替わるのを待つ感じです。切り替えるしかないし、引きずっていても辛いのは自分なので。こっちの選手たちは切り替えがすごく早いんですよ。FWの選手なんて、お前が決めさえすれば引き分けにはなったよ、というような試合でも、次の日にはケロッとして、騒いでいる(苦笑)」
――悩んでいる自分がバカらしくなるというか。
「本当にそうです。そういうのは、こっちに来てすごく感じました。自分に足りないのは、こういう割り切る力なのかな、と思った時期もあって」
――GKは特に大事でしょうね。W杯最終予選は権田選手がずっと出ていて、シュミット選手は痺れるような戦いをベンチで見たわけですが、どんなことを感じていましたか?
「このプレッシャーの中で戦い抜くのは、並大抵のことじゃないな、とすごく感じました。今まで最終予選を勝ち抜いてきた人たちへのリスペクトが、ただただ増したというか。自分だったら、このプレッシャーに耐え抜けるのかと自問自答したとき、自信を持ってイエスとは言えないくらい、ピッチに立って戦っていた選手たちが感じていたプレッシャーは大きかったはず。場合によっては、W杯本大会より、負けられないというプレッシャーは大きいと思うので」
――でも、経験したかった?
「経験したかったかどうかと言われたら、ちょっとわからないです(苦笑)。でも、そういうなかでチームを救っていたゴンちゃんは本当に凄いなと。言ってもエクアドル戦は親善試合ですし、そこの差はあると思います」
目の前の仕事を全力でやることがW杯につながる
――その一方で、W杯には俺が出るんだ、という思いも?
「もちろん、ピッチで日本の勝利に貢献したいという思いはすごくあります。それを大前提として、個人的なことも言えば、W杯に出て活躍できれば、自分のキャリアにおいても次のステップに行ける可能性が出てくると思う。ヨーロッパでのキャリアをシント=トロイデンでスタートさせてもらってすごく感謝していますけど、ここだけで終えたくない。移籍のチャンスを生み出すには、W杯でプレーすることが必要になると思います。
でも、正直なところ、毎日の練習でジョー(・コッペンズ)に負けないように頑張ることで精一杯で、W杯のことを考える余裕がなくて。少しでも抜いたプレーをしたら、ポジションを奪われるという危機感がある。目の前の仕事を全力でやることがW杯に絶対につながると思うので、そういう環境にいられる幸せを感じていますね」