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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
44歳ブッフォン今も正守護神!“切られた監督”インザーギにカンナバーロは… W杯優勝イタリア戦士が「セリエBでお祭り騒ぎ(笑)」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byClaudio Villa/Getty Images
posted2022/10/09 17:01
2007年のブッフォンとインザーギ。ドイツW杯優勝戦士の2人は今、どうしている?
イタリアの地方クラブでは自前の練習施設を持たず、コンクリートの外壁が剥げ、通路から水漏れしているような地元自治体の公営グラウンド施設を間借りしていることがよくある。当然、時間制限はあるし、使用料金もかかる。
ベネベントもその口で、非公開のはずのチーム練習は、グラウンドに隣接する小高い丘からのぞき見し放題だ。牧歌的な南イタリアらしいともいえるが、ユベントスやレアル・マドリーといった世界のトップクラブを渡り歩いてきたカンナバーロには「練習施設への投資こそ弱小クラブが生き残っていくために重要」というこだわりがある。世界を獲った男の理念は厳しい。
「俺はアグレッシブなサッカーが好きだ。ランニングで人の後ろを走るな、前を走れと選手たちには伝えている」
「おまえら、大人しいぞ。もっと笑わなきゃ」
初陣となった2日の7節アスコリ戦は、1-1のドローに終わり、ほろ苦いデビュー戦となった。
「正直に言って、監督から直に指導を受けるのは緊張します」
主将ガエターノ・レティツィアを初め、選手たちは新監督の威光の前にまだ硬直しているらしい。
「おまえら、大人しいぞ。もっと笑わなきゃ」
カリスマ監督の言葉には凄みがありすぎる。少なくともプレーオフ圏内まで行かないと、選手たちは笑えないだろう。
イタリア2部、セリエBは今季、全国リーグとして91年目を迎えた。
かつて、“史上最も豪華なセリエB”と呼ばれたのは、2006-07年シーズンだ。それぞれスクデット歴を持つユベントスとジェノア、ナポリの名門クラブ3強が4位以下を大きく引き離し、規定により昇格プレーオフすら開催させなかった。
ただし、指導者たちや専門家の間では「今季はあの年以上の、至高のシーズンになるのではないか」という期待が週末ごとに高まっている。「セリエBではなく“準セリエA”と呼ぶ方がふさわしい」と主張するメディアや識者も現れた。
降格組であるジェノアとカリアリが昇格の有力候補とされているが、絶対的な本命クラブは存在しない。
パレルモはマンCなどと同じメガグループの一員に
大混戦の背景には、多彩なクラブ母体の影響もあるだろう。
今季のセリエBに参戦する20チーム中、実に8クラブは外国資本下に収まった。時代の富豪たちが、イタリアの津々浦々で覇を競い合っている。
財政難による19年の4部降格から今季セリエBに昇格してきたシチリア島の雄パレルモは、7月にマンチェスター・Cを筆頭とするシティ・フットボール・グループから買収された。
ジローナ(スペイン)や横浜F・マリノスら全12クラブからなるエリート連合の一員となったパレルモは、代表ウィーク中に最先端の設備を誇るマンチェスターのトレーニングセンターに招待され、5日間の合宿を敢行。セリエA昇格に向け、世界トップレベルの全面サポートを受けるようになった彼らには、アスコリやピサ、スパルといった2部の外国資本クラブだけでなく、国中から羨望の眼差しが止まない。
しかし、中断明けの7節でUAE王族のクラブになったはずのパレルモは、0-1で破れた。勝ったのは同じ昇格組のスッティロルだ。