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「資産6兆円超」オーナー就任で金満化→W杯スペイン優勝戦士セスク加入も出遅れ…なぜか「セリエB」に懐かしの名手が集っている!

posted2022/10/09 17:00

 
「資産6兆円超」オーナー就任で金満化→W杯スペイン優勝戦士セスク加入も出遅れ…なぜか「セリエB」に懐かしの名手が集っている!<Number Web> photograph by Emilio Andreoli/Getty Images

コモに電撃加入したセスク・ファブレガス。かつてのW杯スペイン優勝戦士はなぜセリエBに?

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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Emilio Andreoli/Getty Images

 W杯イヤーで欧州各国リーグが盛り上がる中、イタリアの「セリエB」が妙にアツいことになっているという。現地日本人ライターにその動向を追ってもらった(全2回の1回目/#2も)

 イタリア2部リーグ、「セリエB」が今、ちょっととんでもないことになっている。

 狂騒の発端は、元スペイン代表MFセスク・ファブレガスのコモ電撃入団だった。

 コモはミラノから50kmほど北上したところにある瀟洒な湖畔リゾート地で、1907年に創設された古豪サッカークラブは、03年以来セリエAに縁がない。5年前には破産寸前になり、4部から再出発した。そんな田舎クラブに突然、W杯やEUROを制した世界的スーパースターがやってきたのだから、大騒ぎになるのは当然だ。

資産6兆円といわれるナゾの兄弟オーナー

「コモをセリエAに連れていくためにここに来た。僕の望みはこれまでと同じ、いいプレーをして勝つことだ」

 2年契約で加入したファブレガスが、近い将来、クラブの共同オーナーとして経営にも関わる展望を入団会見で語ると、コモは畳み掛けるように元フランス代表の伝説的ストライカー、ティエリ・アンリも株主として経営に参画することを発表した。

 人口8万の観光地にある2部クラブにしては、あまりにも大がかりで派手すぎる。コモはどうやって世界的スターを次々に招く芸当を可能にしたのか。

 カルチョの国には、彼らを決して侮ることができない理由があるのだ。

 もし、イタリア中のクラブ・オーナーたちが札束での殴り合い勝負をしたら、優勝するのは間違いなくコモだといわれている。

 まさかと思われるかもしれないが、富豪で知られる元首相でモンツァの帝王シルビオ・ベルルスコーニも、ユベントスを抱えるアニェッリ家の総帥ジョン・エルカンも、2部クラブのインドネシア人オーナーには敵わない。

 ともに傘寿を越えるロベルトとマイケルのハルトノ兄弟は、父親から受け継いだタバコ事業で大成功を収めた後、金融や小売、観光など多様な業界に手を広げ、455億ドル(6兆円超)といわれる莫大な資産を築き上げた。米経済誌『フォーブス』によるイタリアのクラブ・オーナー個人資産番付では、75億ドルの2位ベルルスコーニを引き離して、堂々の1位に君臨している。

チェルシーで活躍したワイズがCEOに

 娯楽とスポーツの分野へ進出を図ったハルトノ兄弟は、ロンドンの代理企業「セント・エンターテイメント」を通して19年4月、当時セリエC(3部)にいたコモを買収。これまでは目立った資金介入を控え、2部への昇格と昨季の残留を見守ってきた。

 現場のクラブを預かるのは、90年代にチェルシーで長く活躍したCEOデニス・ワイズだ。06年の引退後、指導者キャリアに早々と見切りをつけ、経営畑に転身した。

【次ページ】 荒々しいセリエBで「魔法」を披露できず

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