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「平壌にいる仲間たちのことは気になる」まさかのW杯予選辞退…北朝鮮代表Jリーガーが語る夢の終焉「でも、もう悔いも未練もない」
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byJ.LEAGUE
posted2022/10/06 17:00
FC琉球の最終ラインで奮闘する李栄直(31歳)。W杯出場という夢は奪われたが、今はJ2残留に向けて全力を注いでいる
彼が将来の北朝鮮代表に“欠かせない存在”と認められた試合がある。それは14年9〜10月に韓国で行われた仁川アジア大会だった。
U-23北朝鮮代表に選出された李は、全6試合に出場。韓国との決勝戦では0-1で敗れたが、チームに欠かせない主力として準優勝に貢献した。
翌15年にはアジアカップメンバー入りを果たし、17年には平壌で行われたアジアカップ予選(レバノン戦)で代表初ゴールを決めている。同年、日本で開催されたEAFF E-1選手権で日本代表と対戦したことでも注目を浴びた。
安英学、鄭大世に続くW杯出場を果たせず
スピードとフィジカル面ではアジアレベルにある北朝鮮だが、国際経験が他国に比べて少ないため、ゲームの流れをつかむのはそこまでうまくはない。ハードワークは得意でも、終盤にスタミナ切れするシーンをこれまで何度も見てきた。そうしたチーム全体の流れをうまくコントロールする役割は、日本のサッカーを知る李が適任だった。欠かさず招集されるのは、北朝鮮にはいないタイプの選手だということに尽きる。
「よく代表のスタッフには『安英学とタイプが似ている』って言われていたんですけれど、すごく光栄なことですよね」
2010年南アフリカW杯に北朝鮮は44年ぶり2度目の本大会出場を果たしているが、当時は元Jリーガーの安英学や鄭大世(現・FC町田ゼルビア)の在日選手がチームの主力としてW杯の舞台に立った。李はその系譜を引き継いで今に至るわけだが、W杯出場の夢は果たせないまま、時は過ぎた。