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「平壌にいる仲間たちのことは気になる」まさかのW杯予選辞退…北朝鮮代表Jリーガーが語る夢の終焉「でも、もう悔いも未練もない」
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byJ.LEAGUE
posted2022/10/06 17:00
FC琉球の最終ラインで奮闘する李栄直(31歳)。W杯出場という夢は奪われたが、今はJ2残留に向けて全力を注いでいる
“たられば”の話をしても意味はないが、個人的には李がW杯出場をかけた場所で、悔いなくプレーできていればどれだけ良かっただろうかと思う。立てる舞台がないことの不運さには、同情の念もある。
「報道で“元代表”と書かれることがありますが、その言い方にはちょっと腹が立つんです(笑)。呼ばれなくなったわけではなくて、ただ、代表チームが海外での活動をやめているだけですから。今も現代表というプライドはありますよ。平壌にいる代表のスタッフ、チームメイトが今、どう過ごしているのか気になることもありますし、久しぶりに顔を合わせたいとも思います。
でも、W杯にはもう悔いも未練もありません。各国の代表戦はもう見なくなりました。あ、試合やっていたのかというくらいで(笑)。韓国代表には、仁川アジア大会の決勝戦で戦った元Jリーガーのキム・ジンス(全北現代)がいて、今回カタールW杯メンバーとしてバリバリやっています。それでも『羨ましい』という感覚はなくなりました。同世代の選手ががんばっているなという感覚で見ています」
サッカー選手なら誰もがW杯の舞台に立ちたいと思うだろう。ただ、夢は潰えたとはいえ、李のプロサッカー選手としての人生が終わったわけではない。今は“最後までやり抜ける”環境があることに人一倍、感謝している。
「FC琉球の残留もまだ諦めていませんし、昨年には第一子も生まれて家族という守るべきものもできました。今後の人生についても色々と考える時期に差し掛かっていますが、とにかく今は悔いなく戦い抜きたい」
崖っぷちに立たされているFC琉球がJ2残留を果たした時、李は11月開催のカタールW杯をテレビの前でゆっくりと見ているのかもしれない。
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