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都市対抗で2打席連続ホームランも…なぜか“突然姿を消した”ドラフト候補、本人に直撃した真相「僕は捕手でプロ野球にいきたくて…」 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph bySankei Shimbun

posted2022/10/03 17:13

都市対抗で2打席連続ホームランも…なぜか“突然姿を消した”ドラフト候補、本人に直撃した真相「僕は捕手でプロ野球にいきたくて…」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

昨年の都市対抗野球。2打席連続ホームランを放った伯和ビクトリーズ(東広島市)、上甲凌大捕手(当時20歳)。その後チームを去った理由とは?

 へたに打ったら内野フライにでもなりそうな高めの144キロ。とっさに両腕をたたみ込むとコンパクトに振り抜いて、今度は右中間最深部……1弾目より、さらに遠くまで飛ばしてみせたから驚いた。

 打つだけじゃない。どっしりと腰を据えて、ベンチを見ずに、自分の裁量でサインを投手に送り、柔らかいハンドリングで難しい低めのカットボールも、ピシャッとミットの芯で捕球する。

 しかも強肩。宇和島東高では甲子園出場もなく、大舞台の経験もほとんどゼロのこの捕手が、都市対抗の東京ドームで、これだけ落ち着いて、大胆なプレーを繰り返すのだから、いったいどんな選手なんだ。

 来年は社会人No.1のキャッチャーになっても、ぜんぜんおかしくない……。

 そう思って迎えた今年、「伯和ビクトリーズ・上甲凌大」の消息がパタッと途絶えたかと思ったら、「四国の独立リーグ・愛媛マンダリンパイレーツにオオッと思うような捕手がいる」……そんなウワサが聞こえてきたのが、春の終わりの頃だった。

「病気で体調を崩して…」

「ボク自身、ちょっと面倒な病気で体調を崩したこともあるんですけど、捕手以外のポジションに回されたり、いろいろありまして……。多分、ボクの体調を気遣ってくれてのことだったと思うんですけど、ボクはどうしても“捕手”でプロへ挑戦したかったんです」(上甲)

 本人がこう話す通り、今年を「プロ挑戦の年」と心に定め、背水の陣を敷いて自分を追い込んで……。そんな覚悟が、社会人球界から独立リーグへの転身となった。

 病気も癒え、ひと回り……いや、ふた回りほど大きくなった体躯を躍らせながら、アップから意欲的に動く愛媛マンダリンパイレーツの上甲凌大。

「プロの方にも、ずいぶん見に来ていただいて。いよいよだなって緊張感は去年までとは、ぜんぜん違いますね」

 ブルペンで投球を受ける姿を見て、アレッと思った。サウスポーを相手に腰を下ろして構える体の角度だ。

 左足を一足分ほど前に出し、左肩を前に右肩を後ろに引いて……つまり45度ぐらい一塁側に向いて、ミットを構えている。

 捕手の体感として、右投げのオーバーハンドのボールは真っすぐ前から来るが、サウスポーのボールは多少斜め右(一塁側方向)からやって来る。つまり、その角度に「正対」しようとする構え方なのだ。

 この構え方だと、サウスポーはすごく投げやすいし(多数の証言あり)、審判から見て、左腕の命であるクロスファイアーのギリギリ(右打者内角)が「ストライク」に見えるという(やはり多数の証言あり)。

 誰かに教わったの?と訊いたら、

【次ページ】 「深夜1時の“すき家”メガ盛りが死ぬほど美味しい」

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