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都市対抗で2打席連続ホームランも…なぜか“突然姿を消した”ドラフト候補、本人に直撃した真相「僕は捕手でプロ野球にいきたくて…」
posted2022/10/03 17:13
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Sankei Shimbun
そうなる予感は、最初の打席からしていたんだ。
1死二、三塁で先制点のチャンス。真ん中外寄りのツーシームじゃないだろうか……わずかに、左打席の外へ沈んだように見えた。
おそらくは内野ゴロを打たせようとしたその難しいボールに、バットヘッドがまっすぐに走って、打球はセンター左へのハーフライナーとなって伸びた。
三塁ランナーが帰って、先取点を奪う犠牲フライになったのを喜びながら、一塁からダグアウトに戻ってくるハツラツとした表情がまた初々しくて、こっちもつられて「よかったね……」と笑ってしまったのが、最初の「出会い」だった。
伯和ビクトリーズ(東広島市)、上甲凌大捕手。右投げ左打ちのこんな大型キャッチャーが社会人球界に潜んでいるのを、その時になって初めて知った。昨年の都市対抗野球1回戦、四国銀行戦(11/29)のことだった。
それにしても……と思う。
社会人3年目の20歳(当時、現在は21歳)が、ベテランでもガチガチになるといわれる都市対抗野球の、それも初戦の第1打席のファーストスイングで理想に近いスイングを体現して、先制点を奪う。
「消息がパタッと途絶えた」と思ったら…
こりゃあ、すごいヤツが出てきたぞ……そんな予感が、続く2度目の打席で「現実」となる。
追い込まれてからの、低めのチェンジアップだ。左ヒジに高さを持たせた懐の広い構えから、やはり右半身の開きをギリギリまで我慢したスイングで、堂々の大放物線が東京ドーム・ライト上段のスタンドにまで届く。
都市対抗当時の発表で182cm76kg(およそ1年経って、現在は185cm87kgだという)。
均整抜群の四肢に、頭は小さく、身のこなしに恵まれた体。それを持て余している気配、まるでなし。むしろこのサイズとしては、出色のボディバランス。
さらに驚いたのは、3打席目だ。