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清原和博が桑田真澄から打った日本シリーズ弾は「エサ」だった? 長嶋監督は捕手・村田真一に「明日もあんなことやったら…」
posted2022/10/25 11:00
text by
赤坂英一Eiichi Akasaka
photograph by
JIJI PRESS
巨人が4勝2敗で西武を破った1994年の日本シリーズ、西武の4番だった清原和博は23打数8安打で打率3割4分8厘、4本塁打、8打点と猛打を揮い、敢闘賞を受賞している。西武に0勝4敗で敗れた'90年の雪辱を果たした巨人だが、清原には4年前と同じくまたもやいいように打ち込まれたのだ。
「ちょっと甘いかなと思ったら、カパーン!や」
当時、巨人の捕手だった村田真一(現打撃コーチ)は、'90年は控え、'94年はレギュラーとしてマスクをかぶった。いまも鮮明に覚えているのは、'94年の東京ドームでの第1戦、0-0の2回に迎えた清原の第1打席だ。3ボール1ストライクから桑田真澄に要求したスライダーが外角高めに入り、あっという間にライトスタンドヘ運ばれた。
「ちょっと甘いかなと思ったら、カパーン!や。正直、うわあ、スゴイな、カッコええな、どうしようもないなあって思ったよ」
それは奇しくも、シリーズの“KK対決”で清原が放った1本目の本塁打でもあった。
3点リードされた3回の第2打席は内角を攻めながら、フルカウントから高めの直球を打たれてライト前タイムリーヒット。外も内も弾き返され、0-11で惨敗である。
「当時の清原は絶頂期やろ。外国人みたいにバットが伸びて、全方向ヘホームランを打てる。内角突いて身体を起こして、外角振らせて泳がせるのが基本的なパタ―ンやけど、あれぐらい超一流になるとパターン通りに攻めても打ち取れるもんやない」
そのことを村田が初めて学んだのは、秋山幸二にまさかの一発を浴びた'90年のシリーズである。やはり桑田が投げた試合だった。
そやから、困ったらインコース、これでいこう
「前の打席で決め球にシュートを使ったら、秋山さん、グシャッ! と完壁に詰まったのよ。当然、次もシュートで抑えにいくわな。もっと難しい球やのに、ゴーン! とレフトスタンドまで持っていかれた。こっちがシュ―卜を続けてくると読み切ってたんや」
超一流に同じ攻め方は通用しない。いくら苦手にしている球種やコースでも、見抜かれたら絶好のホームランボールになる。第1戦で清原に本塁打を打たれたとき、あの秋山に与えられた教訓が村田の脳裡に蘇ったのだ。
そこで、投手たちにこう持ちかけた。