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「試合に出るには西田有志と勝負しないといけない」バレー宮浦健人(23歳)が覚悟の海外挑戦…控えめな性格に変化? 早稲田時代から20キロ増
text by
岩本勝暁Katsuaki Iwamoto
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2022/10/04 17:01
左利きのオポジットと共通点が多い宮浦健人(左)と西田有志。宮浦は西田がイタリアへ移籍した昨季のVリーグで日本人のトップのスコアを叩き出している
ジェイテクトはその試合まで連敗を「5」も重ねており、アリーナには重苦しい雰囲気が立ち込めていた。案の定、試合の入り方も悪かった。宮浦のスパイクは立て続けに止められ、第1セットを失った。
覚醒したのは第2セットからだ。途中から入った同期入団のアウトサイドヒッター都築仁が活躍した。宮浦のバックアタックも高い決定力で決まりだし、このセットを取り返した。第3セット以降は、トップフォームを取り戻した宮浦が大車輪の活躍。最後は宮浦にトスが集まり、セットカウント3-1で逆転勝ちした。
安堵か喜びか、それとも重圧からの解放か。試合を終え、コートに仰向けになった宮浦の目から、一雫の涙がこぼれ落ちた。このシーンは、バレーボールの動画配信サービス「V.LEAGUE TV」でも大きく映し出されている。
「ずっと負け試合が続いていて苦しかったんです。チームも落ち込んでいて。そんな厳しい状況でも、覚悟を決めて、勇気を出して、思い切ってスパイクを打ちにいった結果、勝つことができました。あの試合はとてもいい経験になったというか、マインドの部分でもいい学びになったと思っています」
吹っ切れた宮浦はその後もコンスタントに出場し、サーブ、ブロックも含めてリーグ通算651得点をたたき出した。名だたる外国人選手が上位を占める中、日本人のトップを飾る功績だった。
「まだ20パーセントぐらいです」
20時過ぎから始まったインタビューは、30分が過ぎようとしていた。それでも、ピンと伸ばした宮浦の背筋は崩れない。分厚くなった胸板を左手でさする。体重は早稲田大学時代と比べて20キロ近く増えたという。
最後の質問。数年後に訪れるピークが100パーセントだとしたら、今はどれくらいですか。
「まだ20パーセントくらいです」
ニヤリと笑った。
「これからもっと成長できると思っているので。あと80パーセント。まだまだいけます。期待していてください」
飾り気のない言葉はシンプルで、それでいて生気に満ち溢れている。そこには宮浦が初めて見せた強い決意があった。
断言する。できもしないことを口にする男ではない。
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