日の丸を背負ってピッチに立つ意味は、自分なりに理解していたつもりだった。ただ経験豊富な欧州組のそうそうたる顔ぶれの中に、自分が身を置いていることに居心地の悪さも感じていた。指揮官であるハリルホジッチ監督は「野心を持って戦わなくてはいけない」とミーティングで選手たちに向かって説いていたが、プロ2年目のJリーガーはまだ欲が小さく、どこか気後れしていたのだという。

「当時のメンバーには、いわゆる“常連組”がたくさんいたんです。香川真司さん、本田圭佑さん、岡崎慎司さん、長友佑都さん、長谷部誠さん……。代表をずっと引っ張ってきた人たちが多くいて、そういう人たちに自分が割って入ってやるんだという気持ちが足りなかった。どこか“お客さん”のような気持ちでしたし、そんな選手の居場所があるわけもない。後になって、その場にいる資格はなかったんだなと思いました」

　この年、2試合の代表キャップを刻んでいる。だが代表というのは、その席にしがみつこうとする者たちでしのぎを削る競争の場でもある。野心を表現しようとしない谷口の姿勢は、指揮官の目にはどこか物足りなく映ったのかもしれない。その後、代表に招集されることは無くなり、自分のいた席には別の誰かが座ることになった。

代表初キャップを刻んだ2015年6月のイラク戦　©Takuya Sugiyama

Jリーグで大活躍も、一向に声はかからず…

　こうした現実を目の当たりにして、代表の席は簡単には巡ってこないものだと痛感させられた。再び招集されたのは約2年後。それも国内組のみで編成された2017年末のE-1選手権だけだった。結局、W杯ロシア大会のメンバー選考にはかすりもしなかった。

――なんで、もっと本気で代表という場所にこだわってやらなかったのか。

　だが後悔しても遅かった。そしてこの自責の念に駆られる日々は、しばらく続くことになる。

　所属チームである川崎フロンターレでは2017年にリーグ初制覇を成し遂げた。18年にはリーグ連覇だ。ベストイレブンも受賞し、Jリーグ屈指のセンターバックであるという自負もあった。ところがロシアW杯終了後に就任した森保一監督からも、一向に声はかからない。

【次ページ】　約3年半ぶりの招集「チャンスを死んでも逃さない」