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常連組に気後れして“お客さん”のような立ち位置に…谷口彰悟がいま明かす代表初招集時の苦い記憶「日本代表の重みを理解していなかった」
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/09/22 17:03
2015年6月のイラク戦で日本代表初出場を飾ったプロ2年目の谷口彰悟(当時23歳)。しかし、ここから代表に定着することはできなかった
この時期の谷口は、過密日程の真っ只中にいた。
日本代表のキャプテンとして出場したE-1選手権の日韓戦から、わずか中2日で浦和レッズ戦、中3日でルヴァンカップのセレッソ大阪戦、そして中3日で首位・横浜F・マリノス戦と、緊張感と強度が高い4連戦でフルタイム出場している。そのうちの2試合は、チームに新型コロナウイルス感染者が多数出た影響で、ベンチはGK3人態勢で臨む緊急事態だった。過酷な真夏の連戦で、彼は自分の代わりがベンチにいないことを覚悟しながらピッチに立ち続けていたのだ。心身にどれほどの負担がかかっていたのかは想像に難くない。
そしてこの横浜F・マリノス戦で生まれたジェジエウの決勝弾は、谷口のフィードが起点になったものだ。自分の持っているものを全て出し尽くし、ようやく掴み取った劇的な勝利だった。
なぜ、そこまでやれるのか。
そして谷口彰悟というプレイヤーの中に、あれほどの執着心が芽生えたのは、一体いつからなのか。
そんな思いを、探っていこうと思った。
「日本代表の重みを全然理解していなかった」
谷口彰悟が日本代表に初めて選出されたのは2015年のことだった。
プロ2年目にあたるシーズンで、1年目から川崎でレギュラーを掴んでいたセンターバックは、当時のハリルホジッチ監督の目に留まった。
この年、谷口はリーグ戦全34試合でフルタイム出場を達成している。
リーグ戦だけではない。天皇杯とナビスコカップも含め、出場した試合は全試合フルタイムだった。2年目の選手としては理想的というくらいのキャリアを積み上げ始めた時期でもあった。そんな順風満帆のタイミングで、日本代表に初選出されている。
ところが、当時を思い返す本人の表情は険しい。
真っ先に口から出てきたのが、「甘かった」という後悔の念だったほどだ。
「プロ1年目から試合に出させてもらって、2年目も継続してやっている中で代表に呼ばれました。順調にステップアップしていったことで、『もう代表に入れるのか』と思ってしまったんです。まだ日本代表の重みを全然理解していなかった。正直、すごく甘かったと後悔しています」