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「魁皇さんは、僕の涙腺を2回も崩壊させた男です」元大関・千代大海46歳がいま明かす友情秘話と、親方としての哲学「弟子に学ぶことのほうが…」
text by
飯塚さきSaki Iizuka
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2022/09/10 11:02
元大関・千代大海の九重親方のロングインタビュー。後編では、ともに名大関として君臨した魁皇との友情秘話や、親方としての心構えを語ってもらった
他の力士も照ノ富士のように相撲と向き合ってほしい
――親方の一人として、現役の力士たちをどうご覧になっていますか。
やっぱり、夢を持っている子だけが土俵で頑張っているなと思います。特に横綱・照ノ富士。ケガと病気で大関から序二段にまで落ちたとき、「辞めるかもしれない」という話を個人的にもしたことがあったので、そのときは大関になったのはもう“思い出”なのかな、って思っていました。でも、そこからやる気ひとつで彼は変わった。外からの意見ですが、そこを他のお相撲さんたちにも見習ってほしいですね。
照ノ富士はモンゴルから来て、強い気持ちを持って相撲と向き合っています。日本の子たちもあの気持ちを持てば、モンゴル勢とも互角に戦っていける。でも実際には、「競技としての相撲」をしているだけで、そこに人生がかかっているようには見受けられないことが多々あります。言ってしまえば、小学校から相撲をやっていて、「最終就職先がプロでした」という優等生が多い。もちろん、学生相撲が悪いという意味ではないんですが、全力で個性をぶつけ合うような競争がないんです。そういうところも、日本人は遠慮気味なのかもしれません。もっと感情を出して、魂を入れてくれたら、土俵の景色はずいぶん変わるだろうなと思って見ています。
――最後に、かつての龍二少年のような子が目の前にいたら、親方はどう接してあげたいですか。
僕みたいな子、つまり母子家庭だとか、親孝行したいとか、そのために角界に入りたいという子には、その扉をちょっとでも開きやすくしてあげたい。閉ざされた角界に飛び込むのはなかなか難しいので、間口を大きく広げて、いまの子たちにわかりやすく、1から10といわず100まで教えて受け入れたいですね。いまの弟子たちも巡り会いで、一人ひとり僕との出会いのエピソードがあるし、九重部屋にいる時間を大事にしてもらいたいと思って接しています。その後どんな人生を歩んでも、一生の思い出になるからね。<#1、#2から続く>
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