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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「せめて5年前に実現していれば…」の塩試合も 金、金、金…“嫌われた王者”メイウェザー45歳、朝倉未来以前のドリームマッチを振り返る
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph byGetty Images
posted2022/09/24 11:05
元世界5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(45歳)。写真は5年前のMMA王者コナー・マクレガー(右)戦の前日計量で
フィリピン人であるパックマンが本場、アメリカ合衆国で認知されるのは茨の道だったが、ファーストラウンドから試合終了のゴングまで、必ず獲物を倒しに行くスタイルと、チューンナップ戦を挟まずに、次から次へと難敵を下す様にファンは熱狂した。パッキャオは不利な条件でも快く試合にサインし、勝利してきた。
メジャー、マイナーを合わせて8階級制覇を成し遂げたパッキャオと、パウンド・フォー・パウンドKINGの対戦が話題となるのは自明の理だった。デラホーヤを踏み台とした者同士であるという共通項もあった。が、パックマンを最も苦しめたライバルが、ファン・マヌエル・マルケス(4度対戦し、パッキャオの2勝1敗1分け)だったことからも分かるように、パッキャオとメイウェザー・ジュニアは決定的にサイズが違った。
「せめて5年前に実現していれば…」
フロイド・メイウェザー・ジュニアvs.マニー・パッキャオ戦は2009年から開催が囁かれたが、メイウェザー側がパックマンにドーピング検査を強いたり、PPVの取り分を巡ってぶつかったりと、交渉が難航する。
ただ、その間に注目度は上がり続けた。結局、1億6000万ドルから1億8000万ドルの収益が見込まれ、勝者に51パーセント、敗者に49パーセントのギャラを保証する契約で、2015年5月2日にメガファイトが実現。メイウェザー・ジュニアの持つWBA/WBCウエルター級タイトルと、パッキャオが保持する同級WBOタイトルの3冠統一戦として、両者はグローブを交えた。
世界175カ国で生中継され、放映料だけで4000万ドル以上。1万6219枚のチケット売り上げは7219万8500ドル。460万軒以上が購入したPPVの収益は4億3700万ドルを超えたとされ、ボクシングビジネスにおける数々の記録を更新した。
とはいえ、この時点でのメイウェザーは38歳、パッキャオは36歳と、2人のファイターに全盛期の切れは無く、せめて5年前に実現していれば……といった内容に終わる。何度かパッキャオのパンチを浴びたメイウェザー・ジュニアだが、自分の距離で戦うことを忘れず、パックマンの連打を喰わないポジションを取った。4ポイント差と採点したジャッジが2名、残る一人は8ポイント差と付け、無難に勝利する。
“ズブの素人”が相手でもいい
歴史的大一番に勝利し、更にWBA/WBCウエルター級タイトルを防衛して3200万ドルの報酬を得た2015年9月12日の試合後、メイウェザー・ジュニアは引退をアナウンスする。戦績49戦全勝26KOと、無傷のままだった。