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ボクシングPRESSBACK NUMBER
死にかけたボクサーはなぜ芸能界に? 俳優・赤井英和(63歳)が今も第一線で活躍できる理由「半沢直樹のときもNG、多かったなぁ…」
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byShiro Miyake
posted2022/09/08 11:03
プロボクサー引退後、俳優として再起を果たし、30年以上に渡って活躍する赤井英和。出世作『どついたるねん』をめぐるドラマに迫った
1995年には日本アカデミー賞優秀主演男優賞(『119』竹中直人監督)、2001年にも同優秀助演男優賞(『十五才 学校IV』山田洋次監督)を受賞。映画だけでなく民放のドラマやNHKの連続テレビ小説にも数多く出演し、個性派俳優としての地位を確立した。
元アスリートのタレントは少なくないが、俳優としてここまで息長く活躍する存在は極めて稀だ。本人が「とにかく必死のパッチでやるだけ。結局はそのままの自分が、スクリーンなり画面なりに出るんです」と語るように、生き様を飾らずにぶつけることで生まれる唯一無二の存在感が、俳優・赤井英和が求められ続ける理由なのだろう。
赤井英和が語った「井上尚弥の本当の強さ」とは?
インタビューの最後に、赤井に聞いておきたいことがあった。村田諒太や井上尚弥の活躍によって活況を呈している現在の日本のボクシングを、世界的にもっとも層が厚いとされる中量級で頂点に迫った男はどう見ているのか。
「もちろんボクシングはずっと好きですし、熱心に見ています。最近では但馬ミツロ、彼は日本で初めてヘビー級のチャンピオンになれるかもしれへん素材やと思いましたね。もちろん村田選手とゴロフキン選手の試合も見ました。こないだはああいう結果でしたけども、もう1回やったらわからんと思うんやけどなぁ……」
井上尚弥が表紙を飾った『Number』を手渡す。真剣な表情でページをめくる赤井に、「井上選手のどんなところに強さを感じますか?」と問いかけてみた。
「ボクシングって、ホンマにいろんな要素があります。パンチ力、スピード、テクニック……。いろいろありますけど、そんなもんよりも、なにが一番大切か。ここですよ」
赤井はドンッ、と胸を叩いた。
「倒したる、殺したる、絶対に勝つ、という強い気持ち。それが井上選手にはあると思います。まだまだ続くでしょうね、彼の時代は」
ボクサー時代から、いや、それ以前のごんたくれ時代から「命がけ」を身上とする男のこの言葉を、「単なる精神論だ」と退けられる人間が果たしてどれだけいるだろうか。それは“浪速のロッキー”らしい、どこまでも真っ直ぐで清々しい答えだった。<前編から続く>
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