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「トミヤスは技術やフィジカルの素質以上に…」「一段上のレベルに達したと」冨安健洋が“守備の国イタリア”で信頼を得た才能とは
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2022/09/04 11:00
ボローニャ時代の冨安健洋。アーセナル、日本代表でも主力へと定着する土台となったイタリアでの日々とは?
「3年前の夏、初めてトミに会ったとき、彼のテクニックやフィジカルの素質以上に『ここのサッカーを知りたい、学びたい、うまくなりたい』という意欲を全身から発散していたことに強い印象を受けました。彼はより複雑で高度かつ長時間のトレーニングを望み、全体練習の後もつねに集中して個人メニューに取り組んでくれました。その真摯な姿勢から、我々はトミがトップレベルにたどり着きたいと願う野心的な選手なのだということを理解したのです」
トミが一段上のレベルに達したと感じたのは……
――CBだった彼を、右SBで起用するアイデアはどう生まれたのですか?
「トミが来た夏、我々は守備陣を再構築しようとしていました。4バックのうち3人は固まっていたものの右SBだけが決まっていなかった。我々の考えでは、右SBは最終ラインのレジスタとでもいうべき重要なポジションで、そこを任せるには単に巧いだけでなくハートの強さも必須条件でした。トミをキャンプでテストするうちに、監督とコーチ陣の間で彼の技術とフィジカル能力なら(右SBに起用することで)攻守の数的優位を生み出せるのではないか、という発想に至ったんです」
――すぐに右サイドで攻撃の起点にもなりましたね。
「トミが一段上のレベルに達したと感じたのは、右サイドの守備タスクだけでなく、より縦方向へ、よりワイドにタッチライン際から展開し、アタッキングサードに切り込んだりスペースを突いたりする能力が開花し始めたときです。ビッグクラブのサイドプレーヤーに求められる能力ですよ。サイドでのプレーの幅を広げたことが、本人にとってもチームにとっても飛躍的な成長をもたらし、プレーリズムや強度が高いプレミアリーグの関心を引いたのだと思います。
我々指導者はできるだけ多くの戦術オプションを選手に教えたい。ただし、それをモノにできるかどうかは、選手の側にも才能や謙虚に受け止める姿勢が必要です。あらゆる私たちの教えをトミはスポンジのように吸収してくれました」
春爛漫の陽気に、自慢のトミを語るデ・レオの口調は今でも晴れがましい。
「トミに関することなら」と快く時間を割いてくれた
取材で練習場を訪れた日は、重要な祝日である復活祭(イースター)と大一番であるユベントスとのアウェー遠征を控え、チームは非常に慌ただしい時期にあった。加えて元在籍選手についての取材となれば通常は怪訝な顔をされるものだ。
しかし、デ・レオ本人もボローニャの広報スタッフも「トミに関することなら」と快く時間を割いてくれた。冨安を育んだクラブの土壌が、いかに健やかであったかを物語る。