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大学部活の現実「月1万5000円の部費がツラい」金銭面で退部者続出…「地方国立、弱小、資金難」信州大アメフト部が選んだ“法人化”という劇薬
posted2022/09/06 17:00
text by
山崎ダイDai Yamazaki
冗談のように青く晴れた空と、周囲にそびえる北アルプスの山々。
いささか現実離れした夏空の下、その爽やかさとはそぐわない鈍い「ガツン!」という金属音が響き渡る。
美しい松本城下にあるグラウンドで汗を流すのは、信州大学アメリカンフットボール部の面々だ。地元・長野県では「シンダイ」の愛称で親しまれる同大学のアメフト部は、スタッフを合わせ約60名。東海学生リーグ1部に所属し、昨季のリーグ戦績は6チーム中5位だった。
他の多くの競技と同じく、大学アメリカンフットボール界も関東・関西の有名大学が全国の上位を席捲している。そんな中で東海リーグの下位チームである信大は、率直に言えば強豪校とは言い難い。
「年間約600万円かかっていて…」退部者が続いた
だが、そんなどこにでもある体育会チームがいま、注目を集めている。
その理由は、今年4月に行われた部の「一般社団法人化」だ。一般社団法人とは、営利を目的としない非営利法人であり、業界団体や学校などの任意団体を組織化する場合に有効と言われる。
「一番の理由は学生たちの経済的な負担が大きすぎたことです」
法人化の理由をそう語るのは、法人の代表理事を務める佐々木一之だ。佐々木はもともと同部のOBで、2017年からチームのコーチを務めていた。
「信大は長野県の大学ですが、東海リーグの所属なので試合は愛知県など県外まで行かないといけない。そうなると移動費もばかになりません。また、そもそもキャンパスが県内の5箇所に点在しているので、毎週末の練習のために車で1時間以上の距離を移動しなければならない部員も多い。それらの費用を賄うために、部費も高額にならざるを得ないという現状がありました」
遠征や宿泊も含め、活動費は年間約600万円がかかっていたという。収入は現役部員による部費300万円をはじめ、大学からの補助金が約70万円。そのほかの部分は保護者やOBの寄付に頼っていた。