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「理想は走攻守のすべてで一流」昨季までわずか“4”だった男が盗塁王へ爆走中! プロ3年目・ロッテ高部瑛斗(24歳)はなぜ覚醒した?
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千葉ロッテマリーンズ取材班Chiba Lotte Marines
photograph byChiba Lotte Marines
posted2022/08/30 06:00
東海大甲府高、国士舘大を経て19年ドラフト3位でマリーンズに入団した高部瑛斗(24歳)。プロ3年目、飛躍のときを迎えている
プロ2年目も試練は続いた。一軍での出場機会を得ながら5度の二軍落ちを経験。その悔しさを晴らすかのように、今季の春季キャンプやオープン戦から猛アピールを続けた高部は、開幕から1番に起用されると、一時はリーグの最多安打をマークするなど走攻守でチームを引っ張り続けている。
「去年まではどこか焦って、なんとか結果を出さないといけないと受け身になって、引き気味に野球をやっている感じがあったので、今年は積極的にプレーをすることを意識して思いっきりのいい打撃を心掛けています」
プロ入り2年間で放った安打はわずか「9」。シュアな打撃に定評があり、期待されながらも結果を出せない状況が続く中、今年のキャンプ前に自分に誓ったことがある。
「自分が出来る以上のことはできない。だから、自分のやれることを精一杯やろうと考えました。昨年までの自分は一軍で自分の出来る以上のことをやろうとして、結果的に焦ってマイナスになっていた。そうじゃなくてやれることをやる。シンプルに考えるようにしました」
一軍に上がると力み、凝り固まっていた頭の中が、気持ちの整理がついたことで吹っ切れた。高部らしい思い切りのいい打撃が出来るようになった。
サヨナラ許す捕球ミス「迷いがあった」
ただ、今季も開幕早々に悔しい想いをした。忘れられないシーンがある。
4月6日、敵地での北海道日本ハムファイターズ戦。同点で迎えた9回無死一、三塁のファイターズ一打サヨナラの場面で、相手打者が打ち上げた打球が高部のいる左翼方向へと高く上がった。ファウルになるか微妙なあたり。捕球するか、見送ってファウルとするか。高部に迷いが生まれた。
結果、左翼線の内側のフェアゾーンにポトリと落ちるヒットとなり、サヨナラの三塁走者の生還を許す最悪の幕切れとなってしまった。自らの心の迷いが招いた結末。高部は肩を落とし、号泣した。
「迷いがあった。ギリギリまで、どうしようか迷って、最後は見失ってしまった。あそこはたとえファウルになる打球だったとしても積極的に取って、走者をホームで刺すという勝負をすべきだった。迷ったら取る。もっとアグレッシブにいくべきでした。凄い反省しています」
試合後、周りから励まされた言葉の一つ一つを忘れられない。
「明日も試合があるから」
「ずっと試合に出ていたらこういうこともある。切り替えて」
チームの敗戦を一身に背負い込んだ高部を、チームメイトたちはいろいろな言葉で励ましてくれた。ありがたかった。だから、自分らしく恐れずに積極的なプレーをすることを誓った。